原爆の日の首相あいさつ、2022年の草案にはロシア批判があった

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朝日新聞記事山崎啓介2025年8月4日 8時00分平和記念式典で献花する岸田文雄首相(当時)=2022年8月6日、広島市中区 「原爆の日」に広島と長崎で開かれる平和式典の首相あいさつで2022年、草案にはウクライナに侵攻して核兵器の使用をほのめかしたロシアを非難する文言があったが、その後削られていたことが、情報公開請求で分かった。歴代の首相あいさつは「核抑止」や「核兵器禁止」への言及に極めて慎重で、専門家は「核抑止を想起させる文言を、広島、長崎と結びつけて語ることに抵抗感が強い」と解説する。 広島と長崎に原爆が投下されてから今年で80年。広島では毎年8月6日、長崎では8月9日に平和式典が開かれ、市長が平和宣言を、首相があいさつを読み上げるのが慣例になっている。 このうち、首相あいさつは、厚生労働省と外務省が分担して草案を作り、その後、「首相官邸を交えた協議の上で練り上げていく」(厚労省健康・生活衛生局総務課)。 朝日新聞は今回、20~24年の首相あいさつの草案を厚労省に情報公開請求。実際に読み上げられたあいさつと比較した。 その結果、多くはほとんど変わっていなかったが、広島出身の岸田文雄首相が初めて平和式典に出席した22年は、比較的多くの修正があった。 例えば、「広島の地から、私は、『核兵器使用の惨禍を繰り返してはならない』と、声を大にして、世界の人々に訴えます」「我が国は、いかに細く、険しく、難しかろうとも、『核兵器のない世界』への道のりを歩んでまいります」という文言は、草案にはなかったが、あとから足されていた。 一方、広島と長崎のあいさつの草案には「ロシアが行っているような核兵器による威嚇も、ましてや使用も、決してあってはなりません。現下のウクライナ情勢は、『核兵器のない世界』への道のりの厳しさを示しています」との文言があったが、当日は「核兵器による威嚇が行われ、核兵器の使用すらも現実の問題として顕在化し、『核兵器のない世界』への機運が後退している」と、名指しを避ける形になっていた。 また、「広島で『黒い雨』に遭った方々への被爆者健康手帳の交付が迅速に行われるよう、取り組みを進めてまいります」という内容も、広島の草案にはあったが、削られていた。 平和宣言と首相あいさつを研究している広島市立大広島平和研究所の梅原季哉教授(国際関係論)の調べでは、平和宣言は核抑止論からの転換を訴えることがあるが、首相あいさつはこれまで核抑止に触れたことが一度もない。 梅原教授は「核抑止や禁止に触れようとすると、日本も米国の『核の傘』の下にいる現状について弁護せざるを得ず、短いあいさつの中で自発的に触れられないのだろう」とみる。 その上で、「核による威嚇をしたロシアを批判する文言は、歴代首相が避けてきた『核抑止』そのものに触れているわけではないが、関連した表現で、広島、長崎と結びつけて語ることへの抵抗感が強いのだろう。実際の安全保障政策では核抑止を根幹に据えておきながら、広島や長崎では言わないという姿勢は誠実といえるだろうか」と批判した。この記事を書いた人山崎啓介デジタル企画報道部専門・関心分野データ分析、オープンデータ、GIS戦後80年第2次世界大戦では、日本人だけでも300万人以上が犠牲になったと言われています。戦後80年となる今年、あの時代を振り返る意義とは何か。全国各地のニュースをまとめています。[もっと見る]関連ニュースこんな特集も注目ニュースが1分でわかるニュースの要点へ8月4日 (月)萩生田氏秘書を略式起訴へながら運転 増える重大事故JR東、平均7.1%値上げへ8月3日 (日)首相、戦後80年文書見送りへマンホール転落 4人全員死亡トランプ氏、労働統計局長解雇8月2日 (土)「相互関税」新税率7日発動渇く米どころ 暑く少雨の7月高校野球にDH制 来春から8月1日 (金)子どもの学力、大幅に低下男性の育休取得率、過去最高ふるさと納税、1兆2728億円トップニューストップページへ大川原化工機の冤罪事件、公安幹部らの処分検討 捜査点検など対策も5:00山下美夢有が全英女子ゴルフ初優勝 日本女子6人目のメジャー制覇3:00硫化水素・ヘドロと闘った6時間半 マンホール転落、懸命の救出活動6:00「オール横浜」圧勝した市長選、議論回避に批判も 2期目に残る課題6:00就活生に嫌われる「転勤が多い会社」 若い世代は転勤よりも転職?7:00生成AIが高校野球の指導現場にも 練習の効率化には疑問の声も7:00