2025.10.03深水千翔(海事ライター)tags: カーボンニュートラル, 三菱商事, 再生可能エネルギー, 千葉県, 洋上風力発電, 秋田県, 船, 資源エネルギー庁三菱商事を中心とした企業連合が洋上風力発電事業から全面撤退。それにより暗雲が立ち込めているのが造船メーカーや船社です。経済産業大臣が「責任は極めて大きい」と名指しで批判する、その影響を探ります。「我々としては、なんとかして洋上風力発電からのさらなる撤退を防ぎたい」拡大画像洋上風力発電所のタワーを運ぶDCVの例。写真のAegirは5000トン吊りクレーンを搭載(深水千翔撮影)。 2025年9月に千葉県内で行われた風力発電展(WIND EXPO)の講演で資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部の古川雄一風力政策室長は、三菱商事を中心とした企業連合が秋田県と千葉県で進めていた洋上風力発電事業から全面撤退したことに言及。「洋上風力が重要な電源であるという政策上の重要性は変わらない」と述べ、さらなる制度整備を進めていく方針を強調しました。 2050年カーボンニュートラルを掲げる日本政府は洋上風力発電について「我が国の再生可能エネルギーの主力電源化に向けた『切り札』」と位置付けており、今年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では「2030年までに10GW(ギガワット)、2040年までに浮体式も含む30―45GWの案件形成を目指す」ことが明記されています。「最近はデータセンターの建設やDX(デジタル・トランスフォーメーション)、AI(人工知能)の普及といった動きの中で、そもそもの電力の需要が全体的に増えるのではないかという予測もある。従来のように原発か火力か、もしくは再エネのような対立構造ではなく、パイが増えるような状況で、原発も再エネも両方しっかり整備していく」(古川室長) 洋上風力は、事業規模が数千億円から1兆円規模と試算されており、そのプレイヤーも発電事業者から風車メーカーや基礎メーカー、据え付け、運用、維持管理など幅広い経済波及効果が見込まれます。巨大な構造物を海上に建設することから、ブレード、ナセル(風車の中心部)、タワー、基礎などを運び設置を行う大型の船舶や、港と風車を往復するCTV(作業員輸送船)など大小さまざまな船が必要です。 このため、特に造船所や船社は、需要の増加に大きな期待を寄せていました。しかし、そうした洋上風力発電の普及に大きな逆風が吹いています。【次ページ】懸念が現実に【え…どうすんのコレ?】ゼネコンが風力発電のために作った「世界最大級の作業船」