朝日新聞記事有料記事真常法彦2025年7月17日 9時00分 始まりは、入院患者の死。2003年5月の朝だった。 滋賀県警は事件性を疑い、湖東記念病院(滋賀県東近江市)の関係者から事情を聴き始める。 捜査が難航していたかに見えた04年7月、看護助手だった西山美香さん(45)が「自白」した。 「人工呼吸器のチューブを外して殺したのです」 取り調べ担当だった男性刑事への好意があった。身の上話を聞いてくれた。喜んでくれると考え、うその「自白」をしてしまったと、西山さんは後に明かしている。 西山さんは逮捕・起訴された。公判では否認に転じたが、殺人の罪で懲役12年の刑が確定した。 裁判をやり直す再審が認められたのは、満期出所後の17年12月だった。無罪判決を受けて支援者や報道関係者の前で笑顔を見せる西山美香さん=2020年3月31日午後0時30分、大津市、小杉豊和撮影 大津地裁は20年3月、患者は病死の可能性があるとしたうえで、西山さんの「自白」も恋愛感情などを利用した男性刑事による誘導と認め、無罪を言い渡した。 「事件性すら証明されておらず、犯罪の証明がない」。判決は厳しい言葉で断じていた。 ◇ 捜査は、違法だったのではないか。 国家賠償法は、公務員が職務でだれかに損害を与えたら、国や自治体が賠償責任を負うとしている。 西山さん側はその年の12月、国と県(県警)に損害賠償を求めて大津地裁に提訴した。 原告側は訴訟のなかで、西山さんを「供述弱者」と位置づけた。軽度の知的障害や発達障害などの影響で、回答を誘導されやすく、迎合的な供述をする傾向があるからだ。 言葉で自らを守ることが難しい「供述弱者」を、冤罪(えんざい)被害からどう守るか――。今回の訴訟での最も重要な問いでもある。 そんな訴訟の中で、西山さんを再び傷つける出来事があった。 21年9月、県が地裁にある…【はじめるなら今】記事読み放題のスタンダードコース1カ月間無料+さらに5カ月間月額200円!詳しくはこちらこの記事を書いた人真常法彦大津総局|滋賀県警担当専門・関心分野事件、事故、調査報道、人権問題関連ニュースこんな特集も注目ニュースが1分でわかるニュースの要点へ7月17日 (木)アステラス社員に実刑判決ローマ字のつづり方変更へ芥川賞と直木賞、該当作なし7月16日 (水)銀行情報を不正持ち出し日産 追浜工場で車両生産終了3歳女児の放置死から5年7月15日 (火)自公、過半数は困難かインスタアカウント削除命令東海道新幹線が豪雨対策7月14日 (月)胎児減らす手術 進む臨床研究夏の国内宿泊旅費 過去最高比例 主戦場はショート動画トップニューストップページへパウエルFRB議長の解任、トランプ氏が検討と米報道 本人は否定8:20「供述弱者の刑事への恋愛感情を利用」と訴え 問われる捜査の違法性9:00報酬ダウンで悪循環の訪問介護 「退職金を運転資金に」社長の決断9:00SNS動画作成、外注広がる 公選法のあいまい基準に悩む議員と業者5:00「俺は罪人じゃない」刑務所で壊れた心 自身の境遇に重ねた「神」6:00「メス」の養殖ウナギ、肉厚でやわらか エサを工夫し、ブランド化も6:00