スティックタイプの駄菓子こんにゃくゼリー 誕生のきっかけは

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カラフルな坂製菓の「こんにゃくゼリー」=梅田麻衣子撮影 もっちりプルンとした食感のこんにゃくゼリーは、夏はもちろん一年中、人気のお菓子だ。小さなカップ入りの商品もあるが、駄菓子屋さんでは細長い袋にそのまま入ったスティックタイプが定番。真っすぐで涼しげな姿、猛暑の今こそ見習いたい! 日本で初めて、スティックタイプのこんにゃくゼリーを手がけた坂(ばん)製菓(名古屋市中村区)に話を聞いた。優しくすっきり、夢色スイーツ 坂製菓のこんにゃくゼリーは、パッケージの上部をちぎり、そのまま口に運んで食べる。鮮やかな見た目でありながら、優しくすっきりした味わい。原材料には、リンゴ果汁も入っている。Advertisement 坂製菓は坂勤さん(故人)が1965年に創業した。岐阜県出身の坂さんは、結婚を機に名古屋に引っ越し、お菓子屋さんに住み込みで働いた。1年間修業した後に独立。ゼリーをウエハースで巻いた「ウエハース巻き」やおこし、焼き菓子などを作っていた。 95年にこんにゃくゼリーの販売を開始する。きっかけになったのは、何とテレビCM! 「カップタイプのこんにゃくゼリーのCMを見て、アイデアをもらったそうです」と広報担当の林咲良(さくら)さんは話す。 当時は原材料となるコンニャクイモの粉を、こんにゃくメーカー以外の会社が入手するのは難しかった。しかし、坂さんは岐阜に住んでいたころに親戚のこんにゃく屋さんで勤務していたことがあり、独自のルートで原料を確保することができた。 口に入れた時のプルンとした食感とかんだ時のもっちり感のどちらも味わえるよう、原材料の配合にこだわった。「袋を開けた時に汁が飛びにくいように、ということも大切にしたそうです」と取締役の林美紀子さん。汁が飛んで服や手を汚さないように、という優しい配慮。子どもたちも安心して(?)買い食いできますね。 もともと駄菓子メーカーではなかったが、こんにゃくゼリーの発売以降、「子どもたちを喜ばせたいという思い」が一気に開花したようだ。96年には「一度にもっとたくさん食べられるゼリーを」と、坂さんと今の社長の林哲也さんが、通常より2倍長いロングタイプを考案した。定規ではかると、27センチもある。 さらにゼリーの種類を増やしていき、今では「ヨーグルトゼリー」や「ナタデココゼリー」など、さまざまな味がある。手軽に持ち歩ける短い「プチシリーズ」もあり、「塩分チャージゼリー」は熱中症対策にも人気だ。そのままでもカラフルだが、小さく切ってドリンクやフルーツポンチに混ぜると、さらに写真映えしそうだ。サクッとした食感の「トンガリ菓子」=梅田麻衣子撮影 坂製菓は、小さなソフトクリームのような見た目の「トンガリ菓子」も手がけている。販売を始めたのは2021年。昔からあるお菓子だと思っていましたが、製造開始は最近なんですね。「実は廃業した別のメーカーから引き継いだんです」と咲良さんが明かす。 長年トンガリ菓子を製造してきた「井桁千(いげせん)製菓」の廃業に伴い、同じ名古屋にあった縁で声がかかったため、20年に事業を継承した。機械も譲り受けたが、最初はうまく製造できなかった。試行錯誤を重ねて1年後に販売を始めた。 トンガリ菓子は、コーンの中に砂糖などで作ったクリームを詰め、乾燥させる。サクッとした食感にするため、毎日、乾燥時間などを調整している。井桁千製菓は袋の上部をテープで留めていたが、坂製菓が改めて発売する際に小袋タイプに変更した。より長くサクッとした食感を保てるようになった。 それにしても、こんにゃくゼリーとトンガリ菓子では、お菓子の系統が違うような……よく引き受けましたね。「社長がトンガリ菓子が好きなんです」と咲良さんはにっこり。「自分で作ったらいつでも食べられるから」と、引き継ぎを決めたのだという。何とも大胆かつ、夢がある話! 現在、トンガリ菓子を製造しているのは、国内で数社程度。トンガリ菓子の灯を絶やさないためにも、ぜひ続けてほしいですね。 林社長の夢は「トンガリ菓子の大量生産」で、手がけてみたい商品はスナック菓子という。「お菓子が好きで、自分が食べたい、おいしいお菓子を作りたいと言っています」と、林社長の次女でもある咲良さんは笑う。真っすぐにしなやかに「好き」を貫く姿勢こそ、暑苦しい日常を涼しげにやり過ごす秘訣(ひけつ)なのかもしれない。【水津聡子】「カワイイ」センス、花開く坂製菓の公式ホームページから。お菓子が花のように並べられ、カワイイ雰囲気だ 昨年開設された坂製菓の公式ホームページは、お菓子が花のように並べられたカワイイ雰囲気。手描き風の犬のイラストも味わい深い。こちらのデザインも咲良さんが担当している。 咲良さんは海外で働いていた時に、カナダの友人から、こんにゃくゼリーの取引を提案されたことがあった。「将来的には海外にも、こんにゃくゼリーを届けたい」という思いで入社し、現在2年目。今春発売の「フルーツゼリー」の開発やパッケージデザインにもかかわった。「フルーツゼリー」は果汁・果肉入り、合成着色料不使用で、フルーティーな味わいだ。 小さいころからこんにゃくゼリーを毎日のように食べていたといい、愛は深い。「もっと多くの方に知ってもらい、食べて笑顔になっていただけるよう、そして駄菓子業界の一端を担えるよう、尽力したいと思っています」と咲良さんは話す。ステキな思い、花開いています。