毎日新聞 2025/8/26 13:30(最終更新 8/26 13:30) 1661文字ポストみんなのポストを見るシェアブックマーク保存メールリンク印刷絵画「よんまんひきのしらす」について説明する作者の池田菜々香さん=福岡市東区で2025年7月2日、矢頭智剛撮影写真一覧 一見すると真っ白なキャンバス。だが目を凝らすと4万匹の小さなシラスが描かれている――。北九州市小倉北区の「平和のまちミュージアム」で展示されているこの絵画は、美術を学ぶ若者が、戦時中の史実を幅広い世代に伝承しようと考える中で生まれた。シラスを使った独創的な表現に込めた思いとは。池田菜々香さんが大学3年の時、長崎原爆で被爆者した開勇さんの証言を基に描いた作品=福岡市中央区で2023年7月27日、竹林静撮影写真一覧 九州産業大大学院(福岡市東区)で油絵を専攻する池田菜々香さん(22)=北九州市戸畑区=が制作した。「よんまんひきのしらす」と題した縦約2・2メートル、横約1・6メートルのアクリル画で、見る角度によってシラスの下にうっすらと線が浮かび上がる。その線は戦時中、小倉にあった西日本最大の兵器工場「小倉陸軍造兵廠(しょう)」の地図だ。Advertisement 造兵廠は、ミュージアムが建つ勝山公園一帯を含む約58万3000平方メートルの広大な敷地に設けられ、戦車や砲弾、機関銃、米国本土に飛ばす「風船爆弾」などを製造した。最盛期は約4万人が働き、「軍都」を象徴。それは米国からの攻撃対象となる要因になった。絵画「よんまんひきのしらす」に描かれたシラス=福岡市東区で2025年7月2日午前11時41分、矢頭智剛撮影写真一覧 1945年8月9日。広島に続く2発目の原子爆弾を搭載した米軍機は、投下の第1目標を造兵廠や市街地に定め、小倉上空に飛来した。だが視界不良のため、投下場所は長崎に変更された。こうした経緯から、勝山公園には、長崎の犠牲者を悼んで北九州市が建てた「原爆犠牲者慰霊平和祈念碑」がある。 2024年1月、池田さんは生まれ育った北九州にあるミュージアムを訪れ、造兵廠があった史実を初めて知った。「小倉に投下されていたら、4万人もの命が一瞬のうちに失われていたのかもしれない」。この気づきを作品で伝えようと考えた。 戦争をテーマにした創作に取り組むようになった原点には、大学3年の時の経験がある。「福岡市原爆被害者の会」と大学が連携したプロジェクトで、被爆者の証言を基に絵画を描くため、長崎で被爆した開勇(ひらきいさむ)さん(87)=福岡市西区=から一対一で話を聞いた。 「原爆がさく裂した瞬間に見た光を描いてほしい」。そう希望した開さんは、会う度に大量の資料を用意し、熱心に当時の出来事を伝えてくれた。池田さんは証言などを手がかりに試作を重ねて完成させた。 プロジェクトを終えて、池田さんは「原爆や戦争について私は知らないことが多すぎる」と感じた。以降、国内の資料館の他、韓国、英国の戦争博物館を訪ね歩くように。戦争の爪痕や奪われた命の重みを考え、「忘れてはいけない」と考えた。その訪問先の一つが北九州のミュージアムだった。小倉陸軍造兵廠跡。左を流れるのは紫川=1956年9月6日、本社機から撮影写真一覧 作品を考える過程で、曽祖父が造兵廠で働いていたことも知った。「原爆が落とされていたら私は生まれていなかったかもしれない」。戦争がより自分ごとになった。 命の数と重みをシラスで表現するアイデアは、24年夏に生のシラスを初めて口にして「こんなに小さい魚にも命がある」と驚き、ひらめいた。造兵廠もシラスの命も、自分が今まで見過ごしてきたものだった。 投下目標とされた史実を伝えてきたミュージアムの関係者は作品に引き付けられた。水谷桃子学芸員は「学徒や工員が約4万人働いていたという『数』の情報だけでは、個への想像力が働かない恐れがある。池田さんの作品はそれらを考えさせる力がある」。ミュージアムでの展示を提案した。 終戦から80年。当時を知らない世代が大半となり、記憶の伝承は厳しさを増す。戦争をテーマにした資料や作品を「怖い」と敬遠する人も少なくない。一見戦争と結びつかないシラスを題材にした理由には、「誰もが怖がらずに見られる作品にしたい」との思いもあった。 池田さんは作品を前に語った。「遠くから見ると真っ白な絵でも、近づくとシラスを認識できる。『知ろうとすれば見えてくる』というのは、戦争や原爆を学ぶことに似ている。作品が『軍都』小倉と原爆の関わりを知る入り口になるといい」小倉陸軍造兵廠で働く人たちの命をシラスに模して描いた絵画「よんまんひきのしらす」と作者の池田菜々香さん=福岡市東区で2025年7月2日、矢頭智剛撮影写真一覧 作品はミュージアムの企画展「記憶の表象(カタチ)―継承とは何か、を問う」で10月13日まで展示。9月27日には午後2時から、池田さんによるギャラリートークがある。【竹林静】【時系列で見る】関連記事あわせて読みたいAdvertisementこの記事の特集・連載現在昨日SNSスポニチのアクセスランキング現在昨日1カ月アクセスランキングトップ' + '' + '' + csvData[i][2] + '' + '' + '' + listDate + '' + '' + '' + '' + '' + '' } rankingUl.innerHTML = htmlList;}const elements = document.getElementsByClassName('siderankinglist02-tab-item');let dataValue = '1_hour';Array.from(elements).forEach(element => { element.addEventListener('click', handleTabItemClick);});fetchDataAndShowRanking();//]]>