吉田寮日記毎日新聞 2025/8/22 11:01(最終更新 8/22 11:01) 1407文字ポストみんなのポストを見るシェアブックマーク保存メールリンク印刷大掃除に参加した寮生らに振る舞う炊き出し用のカレーを作るため、京都大学吉田寮の食堂の調理場で黙々とタマネギを切る藤田昂太郎さん=京都市左京区で2025年5月17日、山崎一輝撮影 京都大学吉田寮では、かつて食堂で食事が提供されていた。今はその機能がなく、調理場には昼夜問わず、寮生らが訪れて自炊をしている。湧かしたお湯をカップラーメンに注ぐ人もいれば、製麺機を使った自家製麺で本格的なラーメンを作る人も。 食堂は音楽イベントの開催など寮外の人たちにも開かれており、家族のように料理を分け合いながら数人でテーブルを囲む光景も日常的に見られる。Advertisement 京都大学吉田寮で「カレー部のエース」と呼ばれる藤田昂太郎さん(22)は「過去に失ったものはあるが、新たに良い文化が芽生えて今につながっている」と話す。 寮生らが自由に使えるぜいたくな施設と開かれた空間のおかげで、寮には多様なコミュニティーが作られてきた。 藤田さんは元々、積極的に人と話すタイプではないと自己分析する。「いろいろな考えの人たちと深く関われたのは寮のおかげ。アパートで1人暮らしをしていたら、こんなに多くの仲間を作ること、楽しく毎日を過ごすことはできなかった」吉田寮の食堂の調理場に置かれた、約30種類のスパイスが入った藤田昂太郎さん専用のボックス=京都市左京区で2025年5月17日、山崎一輝撮影 梅雨入り前の5月中旬、現棟の大掃除が行われ、参加した約30人にカレーが振る舞われた。 調理場では午前9時から、藤田さんが涙をこらえ、ひとり黙々と大量のタマネギをみじん切りにしていた。冷蔵庫の近くには藤田さん専用の収納ボックスが置かれている。カシミールチリやコリアンダー、ブラウンカルダモンなど約30種類の香辛料が納められ、開けると異国にいるかのような香りが漂う。その中から約10種類を使い、具材のない汁状カレー「サルナ」とドライチキンカレー「チキンチュツカ」を作った。 2種類のカレーを浸すデニッシュのような渦巻き状のパン「バンパロタ」は、今春のインド旅行で食べた一品だ。あまりのおいしさに感動した経験から、寮生らに食べてもらいたいと献立に入れた。 前日に練って寝かせた生地約4キロを冷蔵庫から取り出す。すると、2人の寮生が「手伝うよ」と声をかけてきた。藤田さん指導の下、生地を棒状に伸ばして渦巻き形に丸め、鉄板の上で揚げ焼きにした。鉄板の上で揚げ焼きにされるバンパロタ=京都市左京区で2025年5月17日、山崎一輝撮影 香ばしい匂いに誘われ、周りには寮生らの輪ができた。藤田さんは「熱っ、熱っ」と言いながら、バンパロタを素手で取る。パリパリの表面を最後に手で軽くほぐすことでカレーとの絡みが良くなり、さらにおいしくなるという。 カレーが振る舞われると、そこかしこで「うまっ」「今まで食べた中で一番」という声が上がった。瞬く間に完食。残ることはなかった。 寮生らの満足げな表情を見ると、天を仰いで拳を固めた。「やった! 夢がかなった!」。本当は余ったカレーを、アルバイトするカレー店のシェフに食べてもらい、感想を聞く予定だった。でも、寮生たちが喜んでくれたこと、それに勝るものはなかった。 調理場の片隅には木製の棚が壁面一面に設置されている。大量に並んだ皿や鍋などのほとんどが近隣の飲食店や寮を出た学生らが寄付してくれたものだと教えてくれた。「自分がよく使わせてもらっているから」。他の寮生が使ったものでも、藤田さんは水切りかごに置かれた食器を棚に進んで戻す。食器や調理器具の多さからも、寮には内外問わず、さまざまな人たちが関わっていることが見て取れる。京都大学吉田寮の食堂の調理場で、水切りかごから食器を棚へ運ぶ藤田昂太郎さん。「自分がよく使わせてもらっているものだから」と話し、他の寮生が使ったものでも率先して元にあった場所へ戻していた=京都市左京区で2025年8月1日、山崎一輝撮影 仲間たちと一緒にカレーを食べ、笑い合える場所。それは、かけがえないものだ。だからこそ、吉田寮を残したいという言葉に力がこもった。 「今ここにあるコミュニティーの価値は決して無視できないはずだ」【山崎一輝】【前の記事】「カレー部のエース」 吉田寮との出会い、インドでの「洗礼」関連記事あわせて読みたいAdvertisementこの記事の特集・連載現在昨日SNSスポニチのアクセスランキング現在昨日1カ月アクセスランキングトップ' + '' + '' + csvData[i][2] + '' + '' + '' + listDate + '' + '' + '' + '' + '' + '' } rankingUl.innerHTML = htmlList;}const elements = document.getElementsByClassName('siderankinglist02-tab-item');let dataValue = '1_hour';Array.from(elements).forEach(element => { element.addEventListener('click', handleTabItemClick);});fetchDataAndShowRanking();//]]>