オンラインの森毎日新聞 2025/9/4 22:00(最終更新 9/4 22:00) 2329文字ポストみんなのポストを見るシェアブックマーク保存メールリンク印刷「ファイナルドラフト」 かつて取材したアスリートたちは現役引退後、第二の人生にどう向き合っているのだろうか。スポーツ取材に長年携わった記者としての興味から、Netflixシリーズ「ファイナルドラフト」(全8回)を見た。 この番組は元アスリート24人と現役格闘家の皇治(36)の計25人(うち女子5人)が、セカンドキャリア開拓のために賞金3000万円をかけて身体能力や運動能力などを競うサバイバルバトルを繰り広げるリアリティーショー。Advertisement 雪山登山競走の第1ステージから始まり、その後のステージでは腹筋運動や綱引きなどの個人戦もあれば土のう運び競走の団体戦もあったが、肉体の限界に挑むような過酷な戦いが続き、ステージごとに一定の人数が脱落していく。「ファイナルドラフト」「輝く姿見せたい」ドラフト1位投手も 第一線を退いていた彼らが出演にあたり、事前に体力・筋力トレーニングを相当積んできたことがうかがえる。とはいえ、これはバラエティーで、賞金を獲得するのは最後に残った1人だけ。彼らが心底から賞金が欲しくて出演しているとは思えなかった。 もちろん、マイナー競技出身で知名度が低かったり、栄光とは無縁だったりした人は現役時代に大金を稼いでおらず、賞金3000万円はとても魅力だろう。 たとえ賞金を得られなくても、名前と顔を多少売ることができるのだから、今後のビジネスなどにも生きる可能性がある。プロ野球・DeNAにドラフト1位で入団しながら、ソフトバンク時代を含めてプロ4年間で1軍登板なしに終わった北方悠誠(31)が「華やかな舞台に立てなかったので、輝く姿を見せたい」と出演理由を説明していたが、同じような思いの参加者は他にもいたはずだ。日本ハム時代の糸井嘉男=2010年3月、木葉健二撮影トップスターもずらり だが、功成り名を遂げた元アスリートたちも参加していた。世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級王座10回防衛や世界3階級制覇を達成した長谷川穂積(44)。サッカー・Jリーグで史上初の3年連続得点王に輝くなどJ1通算最多得点記録(191得点)を持ち、ワールドカップ2度出場の大久保嘉人(43)。 プロ野球の日本ハム、オリックス、阪神で外野手として活躍し、首位打者や盗塁王などに輝いた糸井嘉男(44)。2016年リオデジャネイロ・オリンピックのレスリング女子48キロ級で金メダルの登坂絵莉(32)。彼らはそれぞれの競技の元トップスターたちだ。 記者は01年に大久保のセレッソ大阪入団の記者会見を取材したし、糸井がプロ6年目の09年にブレークした時には日本ハム担当として彼の活躍を報じた。長谷川に至っては03年から、16年に現役引退するまでの十数年間、断続的に取材してきた。世界タイトル戦で戦う長谷川穂積=2005年9月、野田武撮影長谷川「関西から世界王者育てるカネに」 長谷川は同年9月にWBCスーパーバンタム級王者になり、世界3階級制覇に加えて35歳9カ月の国内男子最年長世界王座獲得記録を樹立しながら、初防衛戦を行わないまま同年12月に現役引退を発表。 その記者会見では「心と体を一致させて世界チャンピオンになることを目指してやってきて、それを前回(の試合で)達成し、前回以上の気持ちを作るのが難しかった」と、モチベーション維持の困難さを引退理由に挙げた。優勝し、日の丸を広げる登坂絵莉=2014年9月、小川昌宏撮影 記者はその6年前に彼を単独取材した際に「現役は長くても35歳くらいまで」と打ち明けられていたこともあり、自らの人生設計に従ってリングを去ったと思っていた。 彼は引退後、テレビやインターネットのボクシング中継解説者を務め、18年4月に神戸市に開設したボクシングジムの経営も順調な様子だった。番組では賞金の使い道として、有力選手が首都圏のジムに流れている現状に触れて「関西から世界チャンピオンを作りたい。有望選手を引き留めるカネに使いたい」などと説明していたが、切迫感はなかった。「ファイナルドラフト」身体能力の高さに驚き この番組を見て、元アスリートたちの身体能力の高さに改めて驚かされた。一方、ステージによっては安全性に問題があったり(実際にけが人が出た)、公平性に疑問があったりして、バトルの勝敗に興味を持てなかった。ただし、出演者たちが戦い終えた後、爽快感や充実感を漂わせる姿がとても印象に残った。 講道館杯全日本柔道体重別選手権男子60キロ級優勝などの実績を持つが、五輪や世界選手権と無縁だった米村克麻(29)。現在は理容師として働いていて独立資金を得るために出演したといい、戦い終えて「現役時代の悔しさは去ったと思っていたが、今でも試合で抑え込まれた夢を見る。でも、この番組で柔道選手のマインドを浄化した」と心境を明かした。引退後も引きずっていた悔いや未練をようやく断ち、第二の人生へ気持ちを切り替えられたようだ。隅返しで技ありを奪う米村克麻=2020年10月、喜屋武真之介撮影すがすがしい表情は“ハッピーエンド” 彼と同じような元アスリートは他にもいた。終盤のステージで敗退した男性は「こんなに価値のある体験はない。結局、(現役時代を含めて)夢は何一つかなえられなかったが、僕は幸せです。夢がかなえられなくても、こんなにも幸せな気持ちになれるのか。僕は心置きなくアスリートを引退して生きていきます」と感無量の表情だったし、脱落後に「引退した後、こんなに感動することも、悔し泣きすることもなかった。初心に戻れた気がする」と涙ながらに吐露した女性もいた。 肉体の限界に挑んで勝敗を争うことで、現役時代の感覚が呼び覚まされる。長谷川をはじめ元スター選手たちも現役時代の感覚を少しでもまた味わいたくて、出演したのだろうか。第二の人生が順調でも、アスリート時代の充実感には及ばないのだろうか。出演者のほとんどが賞金を獲得できなかったわけだが、彼らのすがすがしい表情を見るとハッピーエンドに感じられた。【来住哲司】【時系列で見る】【前の記事】「イッキ見」に新ジャンル ジェットコースターバラエティー!「トモダチ100人よべるかな?」関連記事あわせて読みたいAdvertisementこの記事の特集・連載現在昨日SNSスポニチのアクセスランキング現在昨日1カ月アクセスランキングトップ' + '' + '' + csvData[i][2] + '' + '' + '' + listDate + '' + '' + '' + '' + '' + '' } rankingUl.innerHTML = htmlList;}const elements = document.getElementsByClassName('siderankinglist02-tab-item');let dataValue = '1_hour';Array.from(elements).forEach(element => { element.addEventListener('click', handleTabItemClick);});fetchDataAndShowRanking();//]]>