映画の推し事:撮影中に心肺停止!働き過ぎバイプレーヤーの迷宮は人ごとか?「津田寛治に撮休はない」

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映画の推し事毎日新聞 2026/4/7 22:00(最終更新 4/7 22:00) 2144文字ポストみんなのポストを見るシェアブックマーク保存メールリンク印刷 昔、俳優になりたかった。役者がテーマの映画やドキュメンタリーを好んで見ていた。「津田寛治に撮休はない」は、それらとは一線を画する異色作だ。 なにせ、名バイプレーヤーとして活躍する津田寛治が、自分自身を演じているのだから。虚実入り乱れる世界で、自分が何者か分からなくなる主人公に、自分とは何か考えさせられた。Advertisement恩師の言葉に俳優を諦めた 小学5年生で劇団四季の「エビータ」に感動して、ミュージカル女優に憧れた。しかし、父から「劇団四季は、東大に入るより難しいんだぞ!」と言われて断念した。 その後映画に夢中になって、20歳のとき俳優養成所の試験に挑んだが撃沈。なにより、役者の道を相談した恩師の一言がグサリときた。 「自分から逃げたいんじゃないの?」 若くて自意識が強かった私は、追い求める理想像とほど遠い自分が嫌いだった。自分ではない者になりたかったのだ。本作を見て当時の気持ちを思い出した。「津田寛治に撮休はない」Ⓒ映画『津田寛治に撮休はない』製作委員会他人の台本、つきまとう影 主人公の津田寛治はどんな役でも来るもの拒まず、全力で演じる俳優。多くの映画やイベントに出演して忙しい日々を送っている。 ある日、自分の台本に混じって「神田実(かみだ・まこと)」と記名された一冊があることに気づく。知らない俳優の台本を持ってきてしまったのかといぶかしむ。以来、周囲で次々と不思議なことが起こり、誰かにつきまとわれている感覚にとらわれる。 スキマ時間にも仕事を入れて撮影所をはしごする津田の姿は、何かに追われているかのようだ。妻は愛想を尽かして家を出て行った。娘の幸と5年ぶりに再会して同居を始めたが、ギクシャクしている。真摯(しんし)だが不器用な彼がコミカルに描かれて、何度も笑った。「津田寛治に撮休はない」Ⓒ映画『津田寛治に撮休はない』製作委員会自分自身を生きないと、役も生きられない 津田はついに過労と役への入り込み過ぎで、撮影中に一時心肺停止になってしまう。そんな彼に、旧友でもある映画監督の網田は言う。「お前は素の自分でいるのが嫌なんじゃないか?」 前述した恩師の言葉が重なった。実際の津田寛治は自叙伝の中で、子どものころ物語に現実逃避していた経験が今の仕事に生きている、と語っている。 一方で「役者は空っぽじゃできない」と、内面を豊かにするために、本業の傍ら絵や文章の創作をしているという。その言葉に、俳優を志していたころを省みた。 自分自身をちゃんと生きないと、演じる役もふくらませられない。役者に限らず、誰しも自分と向き合うことは大切だ。しかし、それは難しい。「津田寛治に撮休はない」Ⓒ映画『津田寛治に撮休はない』製作委員会役掛け持ちで虚実の区別があいまいに 皮肉にも心肺停止の騒動がバズって、津田の元に次々とオファーが舞い込む。多くの役を掛け持ちするうちに、虚構と現実の区別がつかなくなってくる。 幸と話し合おうとしても、自分が出演している作品の娘役の名前で呼んでしまい、激怒される。さらに、どこにいても撮影スタッフの幻影が現れて彼を見つめる。 自分を見失っていく津田の姿は、人ごとではない。私たちも、日常の中でいくつもの自分を演じているからだ。身内や友達など接する相手、芝居でいうと「相手役」によって別人格になる。他人が期待する人間を演じることもあれば、相手に求める役を押し付けることだってある。「津田寛治に撮休はない」Ⓒ映画『津田寛治に撮休はない』製作委員会本当の自分はどこに? 津田は敬愛する巨匠、傘無監督から出演依頼が来て有頂天になる。だが、孤高の芸術家だと思っていた傘無が、実は世俗的な小心者だと知ってぼうぜんとする。とりわけ現代は、自分を保ちにくい。 ミュージシャンで精神科医でもある、きたやまおさむの言葉を思い出す。「今はセルフモニタリングの時代。マイケル・ジャクソンの死は、実像が虚像に振り回された結果」 いまや多くの人が自撮りを楽しみ、SNSで自分を発信している。私自身、SNSを利用していて良い面もたくさんある。だが、赤裸々に私生活をさらしている人を見ると驚く。 ユーチューバーなどには、芸能人並みに有名になる者もいる。津田のように、常に誰かに見られている自分を意識する人も、少なくないのではないだろうか。 女友達と写真を撮って、SNSにアップした時のことだ。了承を得て投稿したのだが、「顔のエラが張って見えるから、削除してくれ」と言われた。彼女はいつも同じ角度から撮った、キメ顔の写真を自身のSNSにあげている。 「見られている自分」を演じているうちに、本当の自分が見えなくなってしまうのではないだろうか。「津田寛治に撮休はない」Ⓒ映画『津田寛治に撮休はない』製作委員会重層的な構造、不穏な結末 追い打ちをかけるように、大きな事件が津田を襲う。彼の狂信的なファンが幸を誘拐したのだ。撮影所を飛び出して助けに走る津田。一番大切なものに気づく。 ハートフルな展開になるかと思いきや、観客はさらなる迷宮に引き込まれる。不穏な結末に背中が薄ら寒くなった。複雑で重層的な構造、なにより津田寛治の存在が、どこまで掘り下げても不可解な「自分」を体現する。 萱野孝幸監督は津田のファンで、自身が脚本を書いてオファーしたという。まさに津田ありきの作品なのだ。彼はどのような役を演じても人間の幾重もある心のひだを感じさせ、妖気が漂う。えたいの知れない魅力は、怪作の世界観そのものだ。ゴールが見えず、何度もトリップしたくなる津田ラビリンス。ぜひハマってほしい。【早坂あゆみ】【時系列で見る】【前の記事】「蒸発」は人ごとか? 路上生活者取材で見た失踪者の真実関連記事あわせて読みたいAdvertisementこの記事の特集・連載1時間24時間SNSスポニチのアクセスランキング1時間24時間1カ月アクセスランキングトップ' + '' + '' + csvData[i][2] + '' + '' + '' + listDate + '' + '' + '' + '' + '' + '' } rankingUl.innerHTML = htmlList;}const elements = document.getElementsByClassName('siderankinglist02-tab-item');let dataValue = '1_hour';Array.from(elements).forEach(element => { element.addEventListener('click', handleTabItemClick);});fetchDataAndShowRanking();//]]>