映画の推し事毎日新聞 2026/4/24 11:30(最終更新 4/24 11:30) 2144文字ポストみんなのポストを見るシェアブックマーク保存メールリンク印刷「人はなぜラブレターを書くのか」Ⓒ2026映画「人はなぜラブレターを書くのか」製作委員会 映画の誕生以来、「トゥルーストーリー」すなわち「実話」は、最も多くの素材を提供してきた。 リュミエール兄弟の「ラ・シオタ駅への列車の到着」は駅に入ってくる列車を撮影しただけだったが、ここに物語が加わり、セルゲイ・エイゼンシュテイン監督の「戦艦ポチョムキン」のように歴史的事件に材を取ったり、アベル・ガンス監督の「ナポレオン」のように実在した人物を登場させたりしながら、「感動」を呼び起こすストーリーテリングへと進化していった。 石井裕也監督の新作「人はなぜラブレターを書くのか」の核心も「実話」である。 映画がフィクションの究極の形であることを思えば、アイロニカルに感じられるかもしれない。しかし、想像力が常に同時代の現実に根ざしていることを強調しなくとも、実話との関係はこの「第七芸術」を語るうえで欠かせないテーマである。Advertisement「人はなぜラブレターを書くのか」Ⓒ2026映画「人はなぜラブレターを書くのか」製作委員会事実を再生させる独特の視点 かつては歴史的事件や偉人の生涯が主な題材とされてきたが、近年では一般人の実話でも観客への訴求力があれば、積極的に選ばれる。 しかもそれは、美しく感動的な話とは限らない。強烈な記憶として刻まれた実際の事件を、誰も予想しなかった角度から描き直し、まったく新しい物語として再生させることも可能である。 事件の性質にかかわらず「強くアピールする」と評価された事象は、ほぼ無条件に映画化される傾向すらある。これを21世紀以降の映画史的特質として捉えると、非常に興味深い。 「イカゲーム」の黄東赫(ファン・ドンヒョク)監督の初期作で「トガニ 幼き瞳の告発」は、韓国社会の暗部を語る。ろう学校での、女子生徒らに対する校長や教員による性的暴行を描いている。 米国にも、神父による性加害を記者の視点から描いた「スポットライト 世紀のスクープ」のような作品がある。登山中に岩に腕を挟まれ、生き延びるために自らの腕を切断した「127時間」の主人公は、有名な登山家ではない。航空事故を扱いながらも、従来の災害大作とは異なり、人物の人生観や背景に静かに迫る「ハドソン川の奇跡」も同様である。 要するに、「非典型的な事件」と「独特な視点」が鍵なのだ。 ここで光るのが監督の役割である。実際の事件をそのまま再現する映画はまれで、スクリーンに移す過程で必ず「語り手の主観」が介在する。正確な考証は重要だが、時間の経過とともに生まれる再解釈が不可欠となる。観客が結末を知っていながら「トゥルーストーリー」を見る理由は、まさにそこにある。2000年地下鉄脱線事故 「人はなぜラブレターを書くのか」も、特異な実話を題材にしている。2000年3月8日の朝、東京都内で起きた地下鉄脱線事故。これを誰も予想しなかった角度から描き直す。 事故で犠牲となってしまった高校生と、その彼に特別な記憶を抱き続けていた女性。20年後、彼に宛てたラブレターが両親の元に届けられ、家族すら知らなかった彼の姿がつづられている。「二重の希少性」を持つ物語である。 大規模災害という事実と、歳月を経ても風化しない心。1000万分の1の確率でも起こりえないような出来事によって、登場人物は悲しみの地平を越えていく。 とはいえ、どれほど驚くべき物語であっても、それをいかに映像化するかで映画の成否は決まる。そこで決定的な役割を果たしたのが、石井裕也という監督である。 彼の作風には二つの極端な傾向がある。「ハラがコレなんで」のように観客を笑わせながら人間愛を描くヒューマンコメディー、「舟を編む」の温かな恋愛劇、「ぼくたちの家族」の家族ドラマ、さらにはコロナ禍と政治的対立を越えて日韓の観客に感動を与えた「アジアの天使」といった、現実を肯定的に乗り越えようとする系譜。 その一方で、「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」や「月」のような、人間存在に鋭く問いを投げかける冷徹なリアリズムも存在する。「人はなぜラブレターを書くのか」は、この両極の中間に位置しているように感じられる。「人はなぜラブレターを書くのか」Ⓒ2026映画「人はなぜラブレターを書くのか」製作委員会石井裕也監督の見事な演出力 本作に登場するのは、極めて日常的な人物である。 成績優秀でスポーツもできる富久信介(細田佳央太)は一見完璧だが、ボクシングジムの先輩、川嶋勝重(菅田将暉)との交流に年ごろの少年のリアリティーがある。高校時代からの思いを持ち続ける寺田ナズナ(綾瀬はるか)も食堂を営む気さくな女性であり、決して典型的なメロドラマの主人公ではない。平凡な夫(妻夫木聡)と結婚し、穏やかな日常を送っている点も印象的だ。 特筆すべきは、高校時代と20年後を行き来して対比させながら、奇跡のような実話を介し、死によって隔てられた男女を見事に結びつける石井監督の演出力である。 そのバランスを支えたのが、ナズナの娘、舞を演じた西川愛莉だ。驚くほど安定した演技だが、出演はわずか2本目だという。現代の新人女優の水準の高さに驚かされる。歳月を重ねた母親役の綾瀬はるかとのケミストリーも見事である。 「人はなぜラブレターを書くのか」。とっぴでありながらも答えを知りたくなる問いに導かれ、やがて心地よい涙とともに満たされた気持ちで夜を迎える。 桜の舞い散る街を歩きながら、この週末もまた映画館へ足を運びたくなる。(洪相鉉)【時系列で見る】【前の記事】ロヒンギャと日本をつなぐ「連帯」の旅 死地を行く姉弟の「ロストランド」関連記事あわせて読みたいAdvertisementこの記事の特集・連載1時間24時間SNSスポニチのアクセスランキング1時間24時間1カ月アクセスランキングトップ' + '' + '' + csvData[i][2] + '' + '' + '' + listDate + '' + '' + '' + '' + '' + '' } rankingUl.innerHTML = htmlList;}const elements = document.getElementsByClassName('siderankinglist02-tab-item');let dataValue = '1_hour';Array.from(elements).forEach(element => { element.addEventListener('click', handleTabItemClick);});fetchDataAndShowRanking();//]]>