毎日新聞 2026/4/16 07:15(最終更新 4/16 07:15) 2048文字ポストみんなのポストを見るシェアブックマーク保存メールリンク印刷京大マガジンの創刊記念イベントで、「0号」を掲げる藤原辰史編集長(中央)と、ミシマ社代表の三島邦弘さん(左)、京都大総合研究推進本部の水野良美さん(右)=京都市左京区の京都大で2026年3月23日午後6時25分、太田裕之撮影写真一覧 京都大総合研究推進本部(本部長、北川進特別教授)と出版社「ミシマ社」が共同企画し、京大人文科学研究所の藤原辰史教授(農業史)が編集長を務める「京大マガジン」。創刊準備号として3月19日に刊行した「0号」は「失敗」をテーマに掲げた。「買い切り(返品なし)」で書店に納品した販売分は数日で版元在庫ゼロとなり、多くの店で完売。出版不況の中、とりわけ厳しいとされる雑誌の「成功」が関係者を発奮させている。 京大百周年時計台記念館(京都市左京区)で3月23日、創刊記念イベントが開かれた。「すごいです。私の本がこれだけ話題になればいいのにと思うほど」。食と農業などに関する多数の著書で知られる歴史学者の藤原さんが切り出すと、ミシマ社代表の三島邦弘さんも「全く想像できなかった」と感嘆を口にした。Advertisement 「京大の基本理念である『研究の自由と自主』の思想を体現することを目指して制作する新しい雑誌です」。編集・発行する京大の同推進本部の水野良美さんが刊行の意図を説明した。 大学の内と外をつなぎ、社会への回路を開くことで、研究の多様性、埋もれている潜在的な研究の萌芽(ほうが)を可視化していくと共に、内外での対話をベースに研究を推進していくことが目標という。京大マガジンの創刊記念イベントで「0号」を手に対談する藤原辰史編集長と、ミシマ社代表の三島邦弘さん(左)=京都市左京区の京都大で2026年3月23日午後6時4分、太田裕之撮影写真一覧 その上で「これだけ雑誌が厳しいと言われる時代に、あえて紙でやることは、いい意味でクレージーな試み。実験的で、次につながる新しい可能性を開いていければいいなと考えている」と話した。 0号は藤原さん、三島さん、文芸評論家の三宅香帆さんの鼎談(ていだん)、2025年ノーベル化学賞を受賞した北川さんをはじめとする京大出身の研究者らへの率直なインタビュー、研究者が自らのつまずきも赤裸々につづった寄稿、短歌・俳句などを収録した。表紙はイラストも含めてアートディレクターの寄藤文平さんが担当。雑誌全体の角が丸くされ、「優しさ、柔らかさを感じる」(藤原さん)のも特徴だ。 0号の表紙に大書きされた「失敗」について、藤原さんはイベントで「大学では成功や成果ばかり書くが、成功が1あれば9ぐらいは失敗。自分の歴史学では資料を大量にコピーして読んでも、ほとんど役に立たず、100回に1回、研究が進む発見がある程度」「私も昨年、京大マガジンの立ち上げと同時期に科学研究費補助金(科研費)の申請で渾身(こんしん)の文章を書いたが、落ちました」と告白。「こういうところが苦手で失敗するんだよ、と言い合えるような、教員だけでなく、職員さん、実験補助の方、学生たちが主人公になれる雑誌でありたい」と語った。 水野さんは「今の日本全体がそうだが、大学内でも分野が細分化して、隣の研究室の方とも交流がなく、自分の専門の中に閉じこもってしまう。目先の非常に短期的な成果ばかりが求められる中、本来の京大が持っていた自由で挑発的な学問が難しくなっているのではないかという懸念があった」と補足した。 雑誌の中で藤原さんは▽学生の一部は失敗をしない情報を得ることを求め、教員が「もっと冒険しよう」と言っても難しい時代になっている▽大学は金と施設をつぎ込んで、成果を出して、という考えになりがちだ――と指摘。「研究で間違いや失敗があれば、周りの人々がそれを修正するのも一種のケア」で、知的共同体として「失敗したら終わりではなく、みんなでフォローしあえるようなものであるべきだ」と語っている。 また、紙媒体にこだわった理由として「紙だと手渡しできる」「大学で一番失われているのは隣人との会話」と語り、「はい」と手渡しする郵便配達員のような身ぶりが大学には必要との考えを示している。 イベントで三島さんは「プラットフォーム企業に依存する電子書籍は企業の決断一つで消えてしまう可能性があるが、紙の京大マガジン0号は永久に残る。これは僕たちを自由にしてくれる」とも話した。京大マガジンの創刊記念イベントで、参加者と対話する藤原辰史編集長(前列中央)と、ミシマ社代表の三島邦弘さん(同左)、京都大総合研究推進本部の水野良美さん(同右)=京都市左京区の京都大で2026年3月23日午後7時6分、太田裕之撮影写真一覧 席を埋めた約100人の参加者からは「学生や市民からの投稿などもあれば」「世界が融解していく中で羅針盤のようなものに」などの感想が語られた。 0号はA5判124ページで税込み1650円。印刷は計3000部で「スタート時点で異例の多さ」(三島さん)という。書店販売の他は京大でのイベントなどで販売し、増刷はしないが、いずれ京大の図書館では読めるようになるという。今後は原則年1回、毎年3月に発行する予定だ。 イベント後の取材で藤原さんは「京大の教員・職員・学生・院生が分け隔てなく交流する場になってほしいし、京大とは関係がないと思っている人たちにも、全員に関係がある学問の参加者として読んでほしい」「人文知がないがしろにされている時代に、これだけ読んでくれる人がいることに未来を感じる。慢心せず、質的に担保できる雑誌を作っていきたい」と抱負を述べた。 三島さんも「京大が自分たちの学問を柔らかく温かな形で届けようという思いが、外の人たちに通じている気がする。出版でできる可能性がまだまだあると解釈していい」と手応えを語った。【太田裕之】あわせて読みたいAdvertisement1時間24時間SNSスポニチのアクセスランキング1時間24時間1カ月アクセスランキングトップ' + '' + '' + csvData[i][2] + '' + '' + '' + listDate + '' + '' + '' + '' + '' + '' } rankingUl.innerHTML = htmlList;}const elements = document.getElementsByClassName('siderankinglist02-tab-item');let dataValue = '1_hour';Array.from(elements).forEach(element => { element.addEventListener('click', handleTabItemClick);});fetchDataAndShowRanking();//]]>