映画の推し事:<ネタバレ解説>理想郷のメッキを剥ぐ生々しさ…実は骨太な社会派「ズートピア2」

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映画の推し事毎日新聞 2025/12/29 22:00(最終更新 12/29 22:00) 2786文字ポストみんなのポストを見るシェアブックマーク保存メールリンク印刷「ズートピア2」Ⓒ 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. 12月5日に日本公開を迎えた「ズートピア2」が、好調だ。世界の興行収入はアニメーション映画史上歴代トップとなるオープニング記録を樹立し(初週末5日間の興収が約5億5600万ドル)、日本でも金曜日に初日を迎える洋画アニメーション映画としては歴代1位に。 3週連続で週末ランキング1位を飾り、国内興収は60億円を突破した(23日現在)。2016年に公開された前作の国内興収は76億円と「君の名は。」「シン・ゴジラ」に続く好成績を収めたが、このペースでいけば前作超えは確実。冬休み期間の積み上げ次第では、100億円突破も十二分にありうる。Advertisement ウサギのジュディとキツネのニックを中心とした可愛らしいキャラクターと2匹のバディー感、世界観に設定等々、人気が高い同シリーズ。 とはいえ、ショートアニメを挟んだものの映画としては実に9年ぶりの続編だ。間が空いたにもかかわらず、熱が冷めずに前作以上のヒットをたたき出しているのは、やはり中身のクオリティーの高さゆえだろう(米国最大級の映画・ドラマレビューサイトRotten Tomatoesでは23日時点で批評家スコア91%、オーディエンススコア96%の高評価を維持)。 本稿では快進撃を続ける「ズートピア2」の“深み”について、ネタバレありで解説していきたい。「ズートピア2」Ⓒ 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.気合空回りのジュディとニック 前作に引き続き、舞台は多種多様な動物が共生する理想郷ズートピア。新人警察官として赴任したジュディは、晴れて警察官になったニックとバディーを組み、日々捜査に当たっていた。 しかし気合が空回り気味で、トラブルメーカーの烙印(らくいん)を押されてしまった2匹はコンビ解消の危機に陥る。なんとか回避しようとヘビが絡んだ事件に首を突っ込むが、ズートピア誕生の歴史に関わる大事に発展していき……というのが、「ズートピア2」の大まかなあらすじ。 前作以上にハイテンポな筋運びにアドベンチャー、新たなエリアが登場するなどエンタメ感満載の仕様ではあれど(前作の「ゴッドファーザー」ネタに続き今回は「シャイニング」ネタが登場するなど映画愛も健在)、その奥にあるテーマは引き続き「楽園の欺瞞(ぎまん)」を鋭く突いたものとなる。差別、偏見の根強さ示した第1作 第1作「ズートピア」は、「肉食」と「草食」という動物たちの生来の性質をフックに、共生社会=システムを作ったとて住人の間に差別や偏見の意識が消えるわけではない――というシビアな面に踏み込んでいた。 動物たちは進化して捕食関係ではなくなったものの、「過去は消えない」というわけだ。マッチョイズムが染みついた警察で奮闘するジュディ、「キツネはずるがしこい」というレッテルに苦しみ、ひねくれてしまったニック、自らの“弱さ”を利用しつつ、肉食動物を悪者にしてのし上がろうとする草食動物ほか、各キャラクターの複雑な内面は現実社会にもオーバーラップするものばかり。その果てにある「相互理解」のメッセージも胸を打つものだった。実は血塗られた共生システム 対して本作では、そのシステム自体が血塗られたものだったことが判明。発案者だったヘビは悪らつなオオヤマネコにアイデアを盗用されたばかりか、凶悪事件の容疑者として追放されてしまう。 さらに真犯人は、ヘビひいては爬虫(はちゅう)類全般のネガティブキャンペーンを行い、民意を操作してズートピアを爬虫類が住めない街にする。かつてかれらが住んでいたエリアを雪で覆い、領地を拡大してゆくのだ。 デベロッパーが不当に土地の利権を手に入れ、先住民を追い出す構造はなんとも闇深く、異種差別を意図的に引き起こす点も醜悪。いかにズートピアがハリボテの存在だったのかを、これまで以上に描き切っている。「ズートピア2」Ⓒ2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.一筋縄でいかぬ“歩み寄り” こうしたショッキングな物語に並行して、相互理解というテーマもさらに追求される。まずはヘビを含めた爬虫類たちとの歩み寄りだ。 ジュディとニックはヘビのゲイリーを追うなかで彼の真心や長所に触れ、行動を共にしていく。2匹に明確な差別意識があるわけではないが、知らなければ分かり合うことはできないのだ。 捜査の一環で爬虫類エリアの顔役であるエリマキトカゲに「虫を食べろ」と洗礼を浴びるシーンも、「郷に入っては郷に従え」を体現しつつ「爬虫類とはこういうもの」というステレオタイプにとらわれているカウンター的な演出として機能している。 付随して、悪気なく水生生物に声をかけて怒りを買うシーンも重要だ。何を好み、何を嫌うのか、当事者への配慮が必要――というさりげなくもブレないメッセージが感じられる。プレッシャーから陥る負のスパイラル 晴れてバディーとなるも、どうにもぎくしゃくしてしまうジュディとニックのすれ違いのドラマもまた、こうした差別の歴史がリンクしている。 2匹は共にウサギ&キツネとしてはズートピア初の警察官であり、本人たちにその気がなくとも個人ではなく「種」として見られてしまう。 署長がジュディに「お前の軽率な行動は若きウサギたちの立場も悪くするぞ」とクギを刺すシーンがその好例で、前作で手柄を上げて偏見をはねのけたフシのある彼女は無意識にプレッシャーを感じ、一発屋にならないように早く次の成功を収めなければ!といさんで暴走。 自分だけでなくニックをヒーローにしてあげたい、最高のコンビだと証明したいという親切心や功名心から、負のスパイラルに陥っていく。「ズートピア2」Ⓒ 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.本当の相棒となるために 一方ニックは、キツネに対する先入観から周囲にのけ者にされたトラウマを引きずり、嫌われ者を演じて心を守ろうとする癖が抜けない。 本人は他人の評価はあまり気にしておらず、理解者であるジュディには危険なことには首を突っ込んでほしくないのだが、彼女の気持ちも尊重したいがためブレーキ役から逃げてしまう。孤独への恐怖から「嫌われたくない」という気持ちが先走ってしまうのだ。 いびつな共依存関係にある2匹は、共に“呪い”の犠牲者ともいえる。そんなジュディとニックが、我が道をゆくビーバーの仲介を経て、ゲイリーをはじめとするこれまで知らなかった世界に触れ、コミュニケーションの大切さを自覚して「本音で話し、聞く」を実践することで相棒となっていくプロセスは、感動的ながらなんとも生々しい。 オオヤマネコの一族から「失敗作」と弾かれた末っ子が帰属意識にとらわれ、悪の道に染まろうとする心理も、なかなかにエグ味のある動機だ。 戯画的×リアリティーの見事な配分こそ、「ズートピア」シリーズの本質といえるだろう。 なお、第3作はおそらく「鳥」にまつわる物語が展開する見込み。共生社会の難しさから目を背けず、着実に歩みを進める美しさを描いてきたシリーズの今後に、引き続き注目したい。(SYO)【時系列で見る】【前の記事】「楓」の福士蒼汰と福原遥は「25年ベストカップル」だ 魅力を200%引き出す行定勲の演出術関連記事あわせて読みたいAdvertisementこの記事の特集・連載現在昨日SNSスポニチのアクセスランキング現在昨日1カ月アクセスランキングトップ' + '' + '' + csvData[i][2] + '' + '' + '' + listDate + '' + '' + '' + '' + '' + '' } rankingUl.innerHTML = htmlList;}const elements = document.getElementsByClassName('siderankinglist02-tab-item');let dataValue = '1_hour';Array.from(elements).forEach(element => { element.addEventListener('click', handleTabItemClick);});fetchDataAndShowRanking();//]]>