毎日新聞 2025/11/2 07:45(最終更新 11/2 07:45) 1533文字ポストみんなのポストを見るシェアブックマーク保存メールリンク印刷今後のコメ作りについて語る宮崎仁志さん。足元に生い茂る雑草のそばには電気柵も見える=石川県珠洲市で2025年10月3日午前10時26分、岩本一希撮影 朝露が乾いた午前10時。石川県珠洲市宝立地区の田んぼに、稲を刈り取るコンバインの大きなエンジン音が響き渡る。奥能登も収穫期を迎え、秋晴れの陽光に照らされた稲穂は黄金色に輝いていた。 ここは、市で3番目の規模を誇る農事組合法人「こうぼうアグリ」が管理する田んぼ。奥能登の稲作の“いま”を知りたく、専務理事の宮崎仁志さん(48)に案内をお願いしていた。宝立地区は地震と津波で大きな被害を受け、その爪痕は今も残ったままだ。Advertisement 能登半島地震から2年目の今春、能登地方では地震前の約7割の田んぼで営農できた。実際、私(記者)が奥能登の各地へ取材に向かう道すがら、水田でコメ作りに励む人々を見かけることも多く、田んぼの復興は順調に進んでいるように感じていた。 「コメ作りは今年もできましたが……。まだ田んぼの修復は続いているんですよ」 宮崎さんの口から出た言葉に、そんな楽観的な考えは変えざるを得なかった。 例えば、ある田んぼでは用水路から引いた水路のあちこちに隙間(すきま)ができていた。上流から水を引いても水が漏れ出て下流の田んぼに行き渡らない。水量を増やすと、今度は上流の田んぼが水浸しになるという。 また別の田んぼでは、6枚のうち1枚だけ人の背丈くらいの雑草がうっそうと生い茂っていた。地震後、整備しても水が抜けてしまい、稲が育たないという。 あぜ道に目をこらすと、雑草に埋もれるようにイノシシよけの電気柵が巡らされていた。雑草は電気柵の漏電を引き起こし、動作不良の原因にもなる。 害虫の温床になる雑草は、周りの田んぼにも影響を及ぼすため定期的な草刈りが必須。しかし、アルバイトで雇うスタッフは農繁期だけの雇用も含め7人しかいない。現在管理する50ヘクタールの田んぼの世話だけで手がいっぱいだ。宮崎さんは「本当は雑草を取りたいけど人手が足りない」と顔を曇らせた。 奥能登を回ると、営農をやめた田んぼやビニールハウスを見かける。こうした場所も手入れが不十分だと、虫害のリスクが高まるという。宮崎さんの田んぼも今年、カメムシによる食害を受け、一部のコメの等級が下がってしまった。「大切に育てたコメが『等外』だと言われてしまった。くず米ですよね」。宮崎さんの悔しさが伝わってきた。 8月には大雨でそばを流れる川が氾濫し、田んぼに濁流が流れ込んだ。その場所には、大小の石が残っていた。今後も災害が起こることを考えると、「この先もここで稲作を続けられるのか」と不安は尽きない。 世間では米価の高騰が続き、各地で積極的な設備投資が進む。一方、地震から丸2年がたとうとしている被災地は、今も災害の“置き土産”に苦慮している。足踏みをするような毎日に、もどかしさが募る。 それでも、珠洲でのコメ作りを諦めないのには理由がある。 「苦労は多いが、上手に世話をすれば良いコメがきっちりとできる」と宮崎さん。今では農協以外にも地元の老人ホームや飲食店にコメを卸すようになり、評判も上々だ。来春までには被災した約6ヘクタールの田んぼの再建も予定する。 珠洲では、人々の営みと農業の距離が近い。その一例が、能登で盛んな祭りだ。「土地の恵みをもたらすこの仕事を続けることに意味がある」。変わってしまった古里の風景を見つめながら、これからもコメ農家として生きていく決意は揺らがない。【岩本一希】取材を終えて 宮崎さんたちが育てたコメを使った弁当を買ってみた。口に入れるとほんのりと甘く、もちっとした食感がおかずと合い、うまさを引き立てていた。「地元で育てたものを地元で食べる」。当たり前のように思えるが、それが多くの人のたゆまぬ努力や愛情の上に成り立っていることに、改めて気づかされた取材だった。【時系列で見る】関連記事あわせて読みたいAdvertisementこの記事の特集・連載現在昨日SNSスポニチのアクセスランキング現在昨日1カ月アクセスランキングトップ' + '' + '' + csvData[i][2] + '' + '' + '' + listDate + '' + '' + '' + '' + '' + '' } rankingUl.innerHTML = htmlList;}const elements = document.getElementsByClassName('siderankinglist02-tab-item');let dataValue = '1_hour';Array.from(elements).forEach(element => { element.addEventListener('click', handleTabItemClick);});fetchDataAndShowRanking();//]]>