2025.10.12吉永陽一(写真作家)tags: 京急, 品川駅, 東京都, 歴史, 駅JR品川駅は大規模再開発の真っ最中ですが、京浜急行電鉄も連続立体交差事業と品川駅地平化など、周辺再開発と並行して線路は大手術の工事が進行中です。高架の品川駅を地上に…工事をどう進める? 東京都心の駅再開発は、地上にいると全体像がつかみにくいですが、上空から俯瞰すると把握しやすくなります。今回は、京浜急行電鉄(京急)の品川駅周辺をお伝えします。拡大画像現在の品川駅全景。右手前が八ツ山橋梁(八ツ山跨線線路橋)。白色の本設トラスとグレー色の前後仮設トラスがほぼ完成していた(2025年6月、吉永陽一撮影) 京急本線は泉岳寺~新馬場間で連続立体交差事業が行われており、いくつかの工事が連続して実施されています。京急の発表資料によると、次のように6工区に分かれています。・第1工区:地下駅の泉岳寺駅から品川駅間・第2工区:品川駅の地平化・第3工区:品川駅から八ツ山橋梁手前・八ツ山工区:JR各線を渡る八ツ山橋梁・第4工区:八ツ山橋梁から北品川駅・第5工区:北品川駅から新馬場駅手前の高架取付部付近 第1工区を見ます。既存の京急線の線路は地下から地上へ出て高架線となり、上下線が分かれて高架の引き上げ線を挟み込む線形です。品川駅を地平化するにあたり高架橋も地平化しますが、この工区では既存線路を一旦東側のJR線寄りに仮移設し、線路を地平化したのちに仮設線路を撤去して戻すという大掛かりなものです。 東側へと移設する線路の仮設構台は、上空からすぐに確認できました。グレー色をした構体です。既存線路の隣に引き上げ線2本と下り本線1本の仮設構台が出来上がりつつあります。 なおこの仮設構台ギリギリの位置には、日本初の鉄道の海上築堤「高輪築堤」が埋没しています。高輪築堤は数か所で試掘調査がされ、JR線を横断する都道環状4号線跨線橋の直下では、「張り出し遺構」と呼ばれる新たな信号機土台らしき石垣が出土しました。 高輪築堤は品川駅から連続していると想定されており、現地保存か記録保存か、さらにどこまで保存できるのか、高輪築堤調査・保存等検討委員会で有識者や事業者などが議論を進めています。 第2工区と第3工区を見ます。高架構造の品川駅を地平化し、直上の2階部分を歩行者スペースにします。駅の向かい側に位置する旧パシフィックホテル跡地は「(仮称)品川駅西口地区A地区新築計画」が着工され、トヨタ自動車の東京新本社も進出します。 地平化された品川駅の直上には歩行者スペースのほかに、京急とJR東日本が共同で整備する「品川駅街区地区」開発計画によって、商業施設を含む高層ビルが建設されます。 続いて八ツ山工区と第4工区の一部です。この工区は新橋梁への架橋となります。既存線路はJR各線を跨ぐため、半径100mのS字急曲線と八ツ山橋梁が控えており、橋梁を渡った後すぐに八ツ山通りの品川第1踏切、旧東海道の品川第2踏切があります。この線形ではスピードアップの妨げとなり、踏切は渋滞と事故リスクが伴います。 そこで、地平の品川駅から一気に高架へ上り、曲線半径を100mから170mへと緩和しながら、径間99.5mの新しい八ツ山橋梁でJR各線を渡り、二つの踏切と北品川駅は高架となって、新馬場駅手前の高架へと連結する工事が進行中です。この連続立体化工事により、都内の京急本線は踏切ゼロが達成できます。 新しい八ツ山橋梁の建設工事はかなり進行しています。「送り出し工法」を採用しているため、濃いグレー色の前後仮設トラスに、白色の本設トラスが連結されており、対岸の受け皿となる橋台部分も建設が進んでいました。新たな八ツ山橋梁が架かると、八ツ山周辺の光景はガラッと変化します。 駆け足で品川周辺上空観察は終了します。筆者(吉永陽一:写真作家)は、2008年のJR東日本田町車両センターのあった時代から品川駅再開発を空撮してきました。今後も継続して記録しお伝えしていきます。【大手術】仮の線路や橋が出現! 品川駅周辺を見る(空中写真)1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。日本写真家協会(JPS)正会員、日本鉄道写真作家協会(JRPS)会員。