有料記事神村正史2025年12月10日 8時01分叔母に抱かれる幼児期の被害者の写真を絵画風に編集したアート作品=被害者親族提供 事件や事故で愛する人の命を奪われることは受け入れがたい事態だ。ましてやヒグマに突然殺されたとなると……。彼の家族や恋人は今も慟哭(どうこく)と悲嘆を繰り返す日々を送っている。 北海道の世界自然遺産・知床にある羅臼岳(1661メートル)で今年8月、下山途中の男性(26)がヒグマに襲われて死亡した事故。彼は事故の3日前、結婚を前提として交際相手の女性の両親へあいさつし、関西の実家に戻った後、北海道へ向かっていた。 男性の両親である曽田忍さん(60)夫妻が「たくさんの人の幸せな未来を奪ったヒグマ事故の悲惨さを伝えたい」として明かした。 男性は都内の会社に勤務し、お盆の時期に実家に戻ることはめったになかった。しかし、今年は8月10日に帰郷。翌11日の朝食後、「ちょっと出かける」と言って外出し、午後7時ごろ帰宅した。そして12日朝、東京へ戻っていったという。胸騒ぎだったのか…… 母が「東京でゆっくりするの?」と尋ねると、「北海道の山に登る」と言う。母は出発しようとする男性に「気をつけなさいよ」と何度も声をかけ、玄関から姿が見えなくなるまで見送った。 あの時、予感があったのだろうか。「もう一度息子を見たい」という気持ちが込みあげてきた。ベランダまで走り、路上に息子を捜した。「頭の先っちょしか見えなくて……。その頭に向かって『気をつけて行きなさいよ』と声をかけた」。 母が最後に見た生前の男性の姿だった。 2日後の14日午後1時10…この記事を書いた人神村正史網走支局長|知床、オホーツク地方専門・関心分野知床、マラソン、山岳、海洋、ドローン撮影相次ぐクマ被害クマが人の生活圏に出没するケースが増え、人身被害も相次いでいます。被害現場の取材を通して見えたものや対策、専門家の知見をまとめます。[もっと見る]こんな特集も注目ニュースが1分でわかるニュースの要点へ12月10日 (水)後発地震注意情報を初発表「危険運転」に数値基準案妊娠めぐる規定見直し要望12月9日 (火)感染症ODA、日本が半減へタイ、カンボジアに空爆本州で唯一クマいない千葉県12月8日 (月)中国軍機がレーダー照射公明「発祥の地」で撤退論消える「宮型」霊柩車12月7日 (日)FIFA トランプ氏に「平和賞」サッカーW杯 オランダと初戦高齢者の医療費 負担見直しへトップニューストップページへ補正予算案、臨時国会会期内での成立公算大 国民民主が賛成で調整6:00津波警報の発表中にグーグル検索、AIが「すべて解除」と誤情報5:00「レーダー照射前の日中の艦船の交信」とする音声公開 中国メディア0:13「90日以内に選挙の用意」ゼレンスキー氏 和平合意に向け譲歩か7:15マチャド氏の前日会見は異例の中止、授賞式も不透明 ノーベル平和賞5:00ヒグマに襲われた息子、GPSに残った最期 両親「二度と被害を…」8:00