2025.11.10乗りものニュース編集部tags: イギリス軍, ミリタリー, 航空, 装甲車, 軍用車イギリス国防省は2025年11月6日、「AJAX(エイジャックス)」装甲車のイギリス陸軍への納入を開始したと発表しました。色々詰め込みすぎて様々な問題が発生! イギリス国防省は2025年11月6日、新型装甲車「AJAX(エイジャックス)」のイギリス陸軍への納入を開始したと発表しました。拡大画像新型装甲車「AJAX(エイジャックス)」(画像:イギリス国防省) 同車両は、イギリス陸軍が約30年ぶりに導入する新型装甲車で、重量は約38トン、最高速度は70km/h。装甲にはモジュラー構造を採用しており、任務に応じて追加や交換が可能です。主要兵装としては、イギリスとフランスが共同開発したCTA 40mm機関砲(CT40)を搭載しており、従来の機関砲よりも高い貫通力を持つとされています。また、地雷やIED(即席爆発装置)への対策も強化されており、底部はV字型構造となっています。 さらに、センサー類や監視装置も充実しており、乗員が車外に出ることなく状況把握・標的指定・情報共有を行うことが可能です。将来的にはドローンとの連携運用も想定されています。 一方で、エイジャックスは当初、2017年ごろに配備が開始される予定でしたが、さまざまな技術的・契約上の問題から長期にわたって延期されてきた経緯があります。もともとは「戦車並みの防御力と軽車両の機動性、高性能センサーを兼ね備えた万能車両」として構想されていましたが、設計の複雑化によって何度も仕様変更が行われ、現在の形に落ち着きました。 特に深刻だったのが騒音と振動の問題です。2020〜2021年の試験中には、異常な車体振動と騒音によって耳鳴りや聴力低下を訴える兵士が相次ぎ、11人が長期的な医療監視対象となりました。現在納入されているタイプでは騒音問題はおおむね改善されたとされていますが、「快適とは言い難い」との評価も残っています。 こうした紆余曲折を経て、2023年には制服組のトップであるトニー・ラダキン国防参謀総長が、「我々イギリスは今、“狂ったように”装甲車に投資しているが、それが実際に使えるのは“10年後だろう”」と皮肉を交えて開発の遅れに不満を示したこともありました。 また、当初の配備予定だった2017年と比べると、現在はドローンの脅威が飛躍的に高まっており、ロシアとウクライナの戦闘では装甲車が自爆型ドローンによって撃破される事例も増えています。そのため、今になって装甲車の近代化を進める意義については疑問視する声もあります。しかし、初期配備を受ける王室騎兵隊の担当者は「英国軍はウクライナのような塹壕戦を行うつもりはない」と強調しています。 イギリス国防省は、エイジャックスおよびその派生型を合わせて589両発注しており、全車両の納入は2030年末までに完了する予定です。【画像】走ってるけど大丈夫!? これが、うるさ過ぎることで有名な新型装甲車です