高市首相が「検討」指示した売春防止法 遊郭から続く性売買の歴史

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朝日新聞記事大貫聡子2025年11月15日 11時01分歓楽街、東京・歌舞伎町には昼夜を問わず多くの人が集まる=2022年1月13日午後6時54分、東京都新宿区、山本裕之撮影 高市早苗首相が11日の衆院予算委員会で、売春防止法の規制のあり方の検討を法相に指示した。これまで罪に問われなかった買春行為について検討されることになる。現在の売防法は、いつ、どのようにしてできたのか。 江戸の吉原、京都の島原、大坂の新町――。日本では、近世三大遊郭が17世紀半ばまでに成立するなど、性の売買が国家や都市によって長く容認されていた。いわゆる「公娼(こうしょう)制度」だ。 変わったのは戦後、売春防止法(売防法)が1956年に制定されてからとなる。敗戦により、日本は連合国軍総司令部(GHQ)に公娼制度の廃止を命じられた。国際社会に復帰するためには、国連の「人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約」の批准が必要になる。その支えとなる国内法として、売防法は整備された。 売防法が定めた「売春」の定義は、①対償(お金)を受けるかまたは受ける約束で、②不特定の相手方と、③性交すること。「人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすもの」として「何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない」と性を売る方も買う方も禁止することを宣言している。売春防止法について、厚生省(当時)や警察庁、法務省などがつくったポスター。「なくそう売春」と呼びかける=一般財団法人女性労働協会女性労働アーカイブ提供 一方で、売る方も買う方も行為そのものには罰則を設けてはいない。処罰されるのは、「公衆の目に触れるような」方法で、売春の相手方となるように(売る側が)勧誘したり客待ちをしたりする場合だ。買う行為は処罰されない。 買われる側が未成年(18歳未満)の場合は、児童買春・児童ポルノ禁止法で買う側が処罰される。 日本弁護士連合会は2013年6月、売防法の改正が必要だと提言した。第5条の勧誘行為への処罰が売春をなくすことにつながらないばかりか、性産業の現場における被害を潜在化しているとして、削除を求める意見書も出している。 「近代日本社会と公娼制度」などの著書がある立教大学の小野沢あかね教授(日本近現代史・女性史)によると、買う行為が問題視され、買春という言葉が知られるようになったのは1970年代以降だ。日本人男性がアジアに女性を買いに行くツアーに反対する女性運動がつくった言葉が「買春」だ。社会問題になったことで、買う側こそが問題ではないかという議論も起きたが、法改正などにはつながらなかった。小野沢あかね立教大教授=東京都豊島区、大貫聡子撮影 2000年代からは売買春の「春」という言葉が実態を表現していないとして、性売買という言葉も使われるようになった。 日本では、性交以外の「性的な行為」を提供する性風俗店が生まれ、都道府県の公安委員会に届け出るという形で営業が合法化された。だが性風俗産業と呼ばれる業態の中にも「売春」をさせるものがあるのは周知の事実で、貧困や虐待などから、未成年を含む女性が性売買に取り込まれているという。 小野沢さんは「日本では、買春を当然の男性の娯楽と見なす考えが根深い」といい、「なぜ売る側が罰せられるのか。社会や法律、制度の問題として考えるべきだ」と指摘する。 歌舞伎町で客待ちをして摘発される少女たちの様子が国内外のメディアで報じられ、国会でもにわかに動きが出始めた。 今月11日の衆院予算委員会で、高市早苗首相は、売春の相手方となる買う側への処罰の必要性について、「必要な検討を行うことを法務大臣に指示する」と答弁した。 買う側が男性に偏る一方で、売る側は女性が多い。貧困や孤立などの背景から売春に至った女性たちを支援してきた女性団体からは、買春者への処罰だけでは不十分で、買春を女性に対する暴力ととらえ、売る側を処罰せず、被害者として保護・支援することの必要性を訴える声があがる。【11月25日まで】全記事が読み放題のコースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちらこの記事を書いた人大貫聡子くらし報道部専門・関心分野ジェンダーと司法、韓国、マイノリティー高市政権自民党の高市早苗総裁が第104代の首相に選出されました。憲政史上で初の女性首相として、維新との連立政権をスタートさせます。関連ニュースをまとめてお伝えします。[もっと見る]関連ニュースこんな特集も注目ニュースが1分でわかるニュースの要点へ11月15日 (土)日中、非難の応酬デフリンピックきょう開幕大谷翔平 4度目のMVP11月14日 (金)総合経済対策案を与党に提示山上被告の母、遺族らに謝罪警察官がクマ駆除可能に11月13日 (木)捜査情報漏らしたか 警官逮捕斎藤元彦・兵庫知事を不起訴知床の遊覧船沈没、無罪主張11月12日 (水)殺傷力ある武器、輸出拡大へ俳優の仲代達矢さん死去 92歳Suicaのペンギンが「卒業」へトップニューストップページへ中国、日本渡航自粛を呼びかけ 高市首相発言で安全に「重大リスク」3:30トランプ氏、相互関税から一部農産物除外 米国民のインフレ不満意識9:35田畑の2階で電気「収穫」、農地も復活 国谷裕子さんと歩いてみると6:00東京都が宿泊税の引き上げ検討 観光客の急増背景、ホテル側に懸念も9:30ドイツ生まれのグミ アメやガム超え急成長 日本で「進化」した理由7:00デンマークの高級家具会社が海外初進出 選んだのは東京でなく神戸8:00