臼井昭仁2025年11月14日 6時00分苗木を獣から守るため、使われているヒトデ=2025年10月31日午後2時31分、岐阜県大野町、臼井昭仁撮影 海の厄介ものとして愛知県常滑市の漁協が駆除したヒトデが、70キロ以上離れた岐阜県大野町の山で苗木や畑を守る役目を果たしている。悪臭を放ち、鹿などの獣を寄りつかせない効果があるためだ。関係者は、「豊かな海と山」をつくる試みとして協力を続けていく方針だ。 愛知県常滑市の鬼崎漁協は数十年前から毎年5~6月、伊勢湾の漁場を荒らし、網にひっかかったり、混入したりするヒトデを駆除している。漁業者が底引き網でさらい、多い年で1トン近く取れる。土に埋めて処分している。 畑に置いておくとカラスが近づかないといった効き目があることは知られていた。同漁協の近くにあり、岐阜県などで植林活動に取り組んでいる中部空港会社(同市)がこれに注目。「忌避剤として使うため譲ってほしい」と提案した。 駆除して天日干しにしたヒトデは、半乾きの状態やぬれると強い腐臭を放つ。乾燥させた状態だと、人にはかすかに磯の香りがする程度だが、嗅覚の強い獣には効き目があり、忌避剤として商品にもなっている。 2023年6月、同社などは揖斐川上流域にある大野町の山の斜面で150本の苗木を植えた後、試験的にヒトデをはさみで切り刻み、網の袋に入れて周囲につるした。管理をした地元のNPO法人里山会理事長の松久幸義さん(69)によると、半年ほど経っても獣害はほとんどなかったという。「以前、一帯で植樹をしたが、大半が鹿に食べられた。半信半疑だっただけに驚いた」 大野町で効果が確認されたため、本格的に取り組みが始まった。 今年6月、同漁協が駆除したヒトデのうち40キロを天日干しに。その後、大野町へ運んだ。松久さんらは、苗木を植えた山のほか、カキ、カボチャ、ネギの畑にも設置したが今のところ獣害は出ていないという。 松久さんは来年以降、作業の手間を省くため、ヒトデを漬けた液体や、ヒトデを直接、地面にまくことも考えている。「自然由来で環境にやさしいのでありがたい」 一方、同漁協の参事、平野正樹さん(53)は「海の栄養分には、山から流れてくるミネラルが大事。ヒトデが山で役に立ってくれればうれしいし、今後も続けていければ」と話している。【30周年キャンペーン】今なら2カ月間無料で有料記事が読み放題!詳しくはこちらこの記事を書いた人臼井昭仁半田支局長専門・関心分野農林水産業、運輸、過疎問題こんな特集も注目ニュースが1分でわかるニュースの要点へ11月14日 (金)総合経済対策案を与党に提示山上被告の母、遺族らに謝罪警察官がクマ駆除可能に11月13日 (木)捜査情報漏らしたか 警官逮捕斎藤元彦・兵庫知事を不起訴知床の遊覧船沈没、無罪主張11月12日 (水)殺傷力ある武器、輸出拡大へ俳優の仲代達矢さん死去 92歳Suicaのペンギンが「卒業」へ11月11日 (火)議員定数削減、自維で温度差米政府機関の閉鎖、解除へ減る東京の農地 都が支援に力トップニューストップページへ家族より「献金が大事」、自宅も事務所も売却 母をなじった山上被告20:30二刀流・大谷翔平はベーブ・ルースの「再来」か きょうMVP発表6:00全従業員にボーナス50万円のアシックス 「人への投資」定着するか6:00【解説人語】都心のビルで人身取引 タイの12歳少女、被害の背景は5:00埼玉の魅力ってコスパだけ? 初の最下位…県民の日に考えてみた6:00男性育休は「妻子の命を救う」こと 取得率100%宣言に込めた思い5:00