Linux向けのGUI型ウイルススキャンツール「Kapitano」。コマンドラインベースのウイルス検出エンジンClamAVを、GTK4+libadwaitaでラップし、初心者でも扱いやすくしたフロントエンドです。内部ではclamscanとfreshclamを呼び出すだけで、独自のウイルス判定ロジックは持ちません。しかし、あるユーザーが、KapitanoのFlatpak版をLinux Mintで使用した際に、「win.exploits」や「Trojans」など24件のウイルス検出があったとプロジェクトのCodebergページに投稿。「レビューゼロのこのアプリは危険。絶対にダウンロードするな!」という強い警告を行ったことがきっかけとなり、同ソフトの開発が最終的に終了したことがわかりました(Neowin)。開発者の冷静な反論も効果なく開発者のZynequ氏は、誤検出の責任はClamAVにあり、Kapitano自体には問題がないと説明。該当コードも提示し、Kapitanoが単なるラッパーであることを明確にします。Kapitanoは趣味で作ったオープンソースプロジェクトで、コードは完全に公開されていると理解を求めたのです。しかし、問題のユーザーは「開発者は悪意ある人物で、マルウェア配布者だ」と再投稿し、開発者がIssueを閉じても、別タイトルで再投稿するなど、攻撃は止まりませんでした。最終的にZynequ氏は「Not Maintained(保守終了)」と宣言しプロジェクトは終了することになります。コードは「The Unlicense(パブリックドメイン)」で公開され、誰でも自由に使用・改変可能ですが、Flathubから削除され、Codebergのリポジトリも数ヶ月後に閉鎖予定です。この騒動に関し、Neowinのコメント欄には「開発者の気持ちが痛いほど分かる。趣味で作ったものにここまで攻撃されるなんて…」という共感のほか、「なぜ無理に対応したのか?無視してブロックすればよかったのでは?」と対応を疑問視する声もよせられています。今回の事例は、オープンソース開発者が直面する心理的負担と、コミュニティの在り方を問い直すきっかけとなりそうです。