蹴り出せ、ボーダー 永島昭浩さんが提案する新たなキックオフ

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「FOOT ALL」プロジェクトについて思いを語る永島昭浩・大阪府サッカー協会会長=大阪市北区梅田で2025年6月27日午後5時12分、高尾具成撮影写真一覧 サッカーの元日本代表FW、永島昭浩さん(61)らが、サッカーの力で多様性のある社会を目指すプロジェクトを進めている。 フットボールにちなんで、プロジェクト名は「FOOT ALL(フット・オール)<けり出せ、あなたのボーダー>」。Advertisement そこには、国籍や性別、年齢、社会的なハンディキャップなどさまざまな境界(ボーダー)を越えるための思いが込められている。「B」が飛び出している理由は 永島さんは2024年6月、一般社団法人「大阪府サッカー協会」の会長に就任した。その後、長年サッカー界に携わった経験を整理して考えていると、ある壮大な夢が浮かんできた。 「世界中で起きている戦争をやめてほしい。災害で苦しんでいる人に寄り添い、前を向いてもらいたい。そんな世界を、未来の子どもたちへとつないでいきたい」 そして、サッカーにはこの夢に近づける役割がある、という結論に行き着いた。 思いだけではなく、行動して一歩ずつでも前進させようと、協会でプロジェクトとして取り組むことにした。日本サッカー協会なども後援してくれることになった。 国内外にプロジェクトを広めようとロゴマークを作った。「FOOT ALL」という文字列。「A」の手前で矢印が書かれ、その先に「B」の文字が飛び出した格好になっている。大阪府サッカー協会のプロジェクト「FOOT ALL」への協力を呼びかけるクラウドファンディングのサイト。左から、元日本代表MFの橋本英郎・協会理事、永島昭浩・協会会長、元なでしこジャパンMFの阪口夢穂・協会理事写真一覧 さまざまな悩みや困難を抱える人たちに「ボーダー(Border)の『B』を外へ蹴り出してみよう」と伝えている。万博で披露、賛同の声 活動はロゴマークの作成だけにとどまらない。 4月27日、大阪・関西万博会場(大阪市此花区)。国連パビリオンが催したシンポジウムで、永島さんはプロジェクトを披露した。 すると、国連パビリオン代表のマーヘル・ナセル国連事務次長補や、欧州サッカー協会(UEFA)のミケーレ・ウヴァ社会・環境サステナビリティ担当ディレクターらから賛同の声が寄せられた。 大阪府サッカー協会は、万博のレガシー(遺産)として世界中に伝えていきたいと考えている。大阪・関西万博の万博パビリオン関係者らが参加したフットサル大会「FOOT ALL CUP」。試合を通じて、大阪府サッカー協会のプロジェクトを発信した=大阪市此花区で2025年5月27日(同協会提供)写真一覧 その取り組みの一つとして計画しているのが、越えたいボーダーや多様性に向けた願いを書き込んだボールをピッチの外に蹴り出すイベントだ。各地で開かれるサッカーの試合前などに実施したいという。 参加者の安全のため、走ることや接触などを禁止したウオーキングフットボールの継続的な開催も予定している。永島さんが考えるキックオフとは プロジェクトの理念を意思表示するためのイメージが、永島さんにはある。大阪府サッカー協会のプロジェクト「FOOT ALL」への協力を呼びかけるクラウドファンディングのリターングッズ=兵庫県芦屋市で2025年6月28日午後4時37分、高尾具成撮影写真一覧 「プロサッカーの公式試合でキックオフの笛の合図後、選手がボールを味方選手に蹴らず、いきなりピッチの外に出す」 「そのボールを次代を担う象徴でもある子どもが受け取って、スローインをするチームの選手に渡す」 「スローインでは、自分のチームではなく相手チームにボールを返して、それから勝負を始めるんです」 「タッチラインの外へ蹴り出されたボールに、多様性が乏しいことによる苦悩や課題が乗っていると見立てると、タッチラインに出て試合の流れが途切れた時に違った世界や他者の気持ちにも気づき、今まで以上にフェアな気持ちが広がっていくはず」 ロゴマークのサブタイトルは「A new kind of kickoff」(キックオフの新しい形を)だ。 このスタイルが、Jリーグで大阪がホームゲームの試合から始まり、最終的にはワールドカップ(W杯)など国際大会に広がることを願っている。 大阪府サッカー協会は、プロジェクトへの理解を広げ、これらの活動を実施していくためにクラウドファンディングを実施している。【高尾具成】