会見で給食調理場へのエアコン設置について説明する大西一史市長=熊本市中央区の熊本市役所で 熊本市は市立小中学校の給食調理場すべてにエアコンを設置する方針を決めた。調理場は厳しい暑さの中でも異物混入防止のため窓を閉め切るため「サウナ状態」となり、熱中症の疑いで体調を崩す調理員が相次いでいる。未設置の94施設について夏休み期間中に工事を進め、来年夏の設置完了を目指す。【中里顕】 大西一史市長が25日の定例記者会見で明らかにした。熊本市教委によると、市内の給食調理施設は複数の学校分を作る共同調理場13施設と、学校併設の単独調理場85施設の計98施設ある。このうち94施設(消毒スペースなど除く)でエアコンが設置されていなかった。Advertisement 調理場は、虫やほこりが給食に入ることを防ぐため閉め切られ、室温は揚げ物をする際には40度を超える。6月30日~7月11日、調理員8人が熱中症とみられる症状で医療機関を受診、うち2人は救急搬送されていた。市はエアコン設置で食中毒予防にもつながるとしている。 費用は20億円台の見通しで、市債を主な財源として活用する。夏休み中に30施設の設置を終える計画で、残りの施設も来年夏までに設置したい考えだ。 調理場のエアコンを巡っては、熊本市PTA協議会からも調理員の労働環境改善に向けて市と市教委に設置の要望が出ていた。小学校に併設されている調理場=熊本市教育委員会提供 大西市長は「調理員の労働環境を整備するとともに、食中毒発生リスクを抑えて、子どもたちに安全安心な給食を提供し続けるためには、一刻も早く(エアコン整備を)完了させる必要がある」としている。設置率、政令20市でワースト2位 文部科学省の調査(2024年9月時点)によると、全国の公立学校給食調理施設で、エアコンが設置されている割合は共同調理場が91・4%、単独調理場は83・6%だった。これに対して熊本市はそれぞれ7・7%と3・5%にとどまり、全国で主流の単独調理場の設置率は政令20市の中でワースト2位だ。市内では今年の猛暑で調理員が熱中症と見られる症状になるケースが相次ぎ、大西一史市長は危機感から改善に乗り出したといえる。 大西市長は25日の記者会見で「連日猛烈な暑さが続いている。調理員の熱中症が増加しており、エアコンを緊急整備することにした」と述べた。 政令市で単独調理場のエアコン設置率が最も低いのは大阪市の0%で、同市の対応を問題視する声が出ている。熊本市はこれに次ぐ低い設置率で、全国の設置率とあまりにもかけ離れており、調理員の過酷な職場環境の改善遅れは大きな課題だった。 熊本県全体のエアコン設置率も共同調理場79・7%、単独調理場40・4%で、いずれも九州で最も低い。県人口の4割強が暮らす熊本市の設置率が低いことが影響している。 全国的な猛暑を受け、学校給食調理施設のエアコン設置は全国で進められている。文科省の20年の前回調査と比較し、24年調査は共同調理場が14・1ポイント、単独調理場が17・1ポイント上昇していた。エアコン設置は首長の政策判断次第の側面もある。 熊本市教委は「整備するつもりはあったが予算を含めて教育課題に優先順位を付ける必要があり、従来はスポットクーラー設置などで対応してきた」と説明する。20億円台の費用を投入し、すべての給食調理場へのエアコン設置に乗り出す。