京都駅周辺の遺失物、窓口に年24万件 続く増加、職員6人日夜作業

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大量に保管されている傘=京都市下京区の下京署京都駅前落とし物窓口で2025年7月7日午後2時36分、水谷怜央那撮影 京都府警に届けられる遺失物が増えている。府警によると、2024年の拾得件数は約63万件にのぼり、1971年の統計開始以来、過去最多となった。無記名の交通系ICカードって落とした時、どうしたら自分のものって証明できるのか――。 棚にずらっと並んだスマートフォン、鍵、財布。京都府内で一番多くの遺失物が集まる下京署の「京都駅前落とし物窓口」の通路には、車椅子や電動スクーターが所狭しと置かれていた。中には荷物が入ったスーツケースまであった。Advertisement 窓口には、24年の1年間で約24万1200件(JR西日本保管のものも含む)の遺失物が届けられる。1日換算すると、平均約660件。府内で24年に最も遺失物届が多かった下京署全体では約28万2000件にも及ぶ。大部分がこの窓口に集約していることになる。 京都駅周辺には、ホテルや商業施設が数多く点在する。遺失物はそれぞれの施設で約1週間保管された後、窓口に預けられる。 窓口に所属する府警職員は6人。拾った日時、場所などを記したタグをつけて袋や箱にまとめたり、30都道府県(24年末)の遺失物を一元化して管理する「共通基盤システム」に登録したりするなど作業に日夜追われている。 同署会計課によると、預けられる遺失物が最も多いのは各駅を所管するJR西日本。毎週火曜と金曜、それぞれ約1200~1300件の遺失物やそのデータを窓口に届けに来るという。朝から振り分け作業やデータ入力作業に取りかかるが、府警本部から「応援」を呼ぶこともある。 もちろんこれらの作業は、落とし物を受け取りに来た人の対応と並行して行われる。この返却作業がまた煩雑だ。外国人観光客のスマホはSIMカードが抜かれていることが多く、照会が困難=京都市下京区の下京署京都駅前落とし物窓口で2025年7月7日午後2時39分、水谷怜央那撮影 今年4月から窓口に配属となった同署の栗原梨花子さん(24)は「すぐに返してもらえるという認識で来る人も多いが、照会をしないと簡単には返すことはできない」と話す。例えばクレジットカードなどのカード類は名前、カードの色、模様、落とした日時やカード会社名のほかにも、下4桁の番号を言ってもらう必要がある。細かい特徴を覚えておらず、その日のうちに返却まで至らないケースもあり、スムーズに進まない。 コロナ禍だった2020年~21年は一時的に遺失物が減った。しかし、それ以降は増加傾向が続く。22年は拾得件数が約49万9000件、遺失件数は約10万3000件だったが、24年は拾得件数が約63万2000件、遺失件数は約11万6000件に増えた。要因について府警会計課は「観光客の増加が要因として考えられる」と分析する。 拾得物の内訳で最も多いのが、運転免許証やキャッシュカードなどのカード類で、24年は約17万4000件。その後は財布約3万件▽鍵類約2万6000件▽傘約2万3000件▽スマホ類約1万6000件――と続く。最近では、ワイヤレスイヤホンやモバイルバッテリー、加熱式たばこの落とし物も増加しているという。 警察署では3カ月間保管し、その後は遺失物の種類などに応じて廃棄、売却する。落とし物をした人は、3カ月以内に近くの署に届け出をすることで全国の署に届いた落とし物の中から特徴に合うものを探し出すことができる。オンラインで届け出することも可能だ。 遺失物に記名がない場合でも、細かい特徴を伝えることで見つかることも。無記名の交通系ICカードの場合、いつ、どこの駅からどの電車に乗ったのかなどを伝えたり、鍵の場合は、家族が持っている同じ鍵の写真を見て、形の特徴や番号を伝えたりすることが重要だという。傘も落とした日時、場所、長さなど細かい情報を伝えれば返ってくる可能性が上がる。 同署会計課の尾上浩史課長は「できるだけものを落とさないこと」が最大のお願いとしつつ、無くした際は「色などだけでなく、より細かい特徴のヒントがあれば一生懸命探し出します」と話している。【水谷怜央那】