新年早々の運動で、気をつけるべきことは?(写真はイメージ)=ゲッティ写真一覧 一年の計は元旦にあり――。 「今年こそは」と、初日の出に体質改善を誓った人もいるはずだ。だが、要注意。新年早々の運動で、体のどこかが「ブチッ」といってしまったら笑えない。 運動を始めるなら、どんなことに気をつけたらいいだろう。絵に描いた餅にならないようにプランを立てるコツは?Advertisement 中高年の健康増進に詳しい、筑波大人間総合科学学術院の久野譜也教授(63)に聞いた。本文の最後では、運動メニューと詳しいやり方についても紹介する。筋肉の「サビ」に注意 ――なまった体で運動を再開する際には、どんな点に気をつけたらいいですか。 ◆前提からお話ししましょう。長いお休みであまり動かなかったり、睡眠時間が普段よりも長かったりすると、筋肉は普段より固まった状態になります。筋肉が伸び縮みすることで体は動きますから、こり固まった筋肉を急に伸ばしたらどうなるか。ブチッといくのは想像しやすいかと思います。 ――運動習慣が元々あった人でも? ◆例えば、通勤の移動だけでも結構歩きますよね。その普段の運動量が減った状態が3日も続けば、筋肉は固まってしまいます。 一方、運動していない期間が半年以上や数年単位など長期に及んでいる人は、筋肉の「サビ」にも要注意です。筋肉は使わないと筋線維が細くなり、その周りにサビのような結合組織がたまっていきます。このサビ、硬いんですよ。筋肉のスムーズな伸び縮みを邪魔してしまうんです。無理に引っ張れば、輪ゴムのようにどこかでブチッと切れてしまう。なまった体の動かし方は ――年明け早々ケガをしないために、何から始めましょうか。 ◆サビを落とすにも、固まった筋肉を柔らかくするにも、最初はストレッチが有効です。特に下半身ですね。太ももの前後やふくらはぎを伸ばしたり、足首を回したり。もちろん上半身も忘れないようにしてください。 ――体が少し楽になってきました。次は?筑波大人間総合科学学術院の久野譜也教授=東京都文京区の筑波大東京キャンパスで2025年12月24日午後2時25分、千脇康平撮影写真一覧 ◆次はウオーキングで血流を促していきましょう。最低でも10分はかけたいところです。足がむくむのは血が滞留しているからで、疲労物質がたまった状態です。ふくらはぎの筋肉は第2の心臓とも呼ばれ、引っ張られたり縮んだりすることで血液を心臓に送り出す「筋ポンプ」の働きを担っています。ウオーキングでこれを活発にしていきます。 ダッシュなど負荷の強い動きは、ウオーキングの後に軽めのジョギングを5分なり10分なりやってからにしてください。ですから、体を動かし始めてから20分はかけた方が安全ですね。 運動する日が4、5日くらい続けば、体は順応し始めます。筋肉の硬さ、サビが少しずつ取れていきます。 ――習慣化することが大事ですね。 ◆ウオーキングは毎日やってもらっても体には負担にはなりません。慣れてくれば体を鍛える運動を始めましょう。(自分の体で負荷をかける)自重の筋力トレーニングは、週3日のペースでやれば今まであまり運動する習慣がなかった人でも十分効果が出てきます。掃除しながらでも、好きなユーチューブやテレビ番組を見ながらでもいいですから、トライしてみてください。「どうしたら続くか」を掘り下げる ――運動の計画を長続きさせるコツは。 ◆「続かないようなら始めないでください」と、私はあえて言っています。何度も長続きしない経験を重ねると、続けられなかったというトラウマだけが残ってしまうから。それでもやりたいというのであれば、「何をやるか」の前に「どうやったら続くか」をまずは考えてください。 私は、家族の目に入る場所のカレンダーに記録をつけるようにしています。空白が目立つと家族に言われてしまいますからね。日常的に使うスマートフォンに記録するのもいいでしょう。 その上で、まずは2週間必ず続けることに全力を注いでほしいです。筋トレが週に3日だとすれば計6日になります。ウオーキングは1日8000歩以上を目指しましょう。また、長続きには効果を実感できることも重要です。ウオーキングは健康によいとされている=ゲッティ写真一覧 ――自分で効果を実感するには? ◆地下鉄の階段の上り下りでいつも息が上がる。スリッパを履くと最近よくつまずく……。2週間運動を続けてみて、そうした「セルフチェックポイント」をチェックします。変化があれば、モチベーションになる。効果を実感できなければ、運動の方法がまずかったか、筋トレの種類やセット数が少し足りなかった可能性があります。チェックしたら、もう2週間やってみる。これまでの経験上、8割くらいの人は2回目もクリアしていきます。今年こそ、運を動かそう ――運動を続けることの意味を、教えてください。 ◆運動の効果って、貯金ができないんです。3カ月頑張って体力や筋肉がついたとしても、かけてきた時間と同じだけやらない時間が続くと、始める前の状態にほぼ戻ることが科学的にも証明されています。時間やお金をかけても、続けないなら無駄になるんだということは理解しておくにこしたことはありません。 また、一人で淡々と続けられる人はやはり少数派です。お住まいの地域には、例えばスポーツのコミュニティーや、フィットネスクラブがあるはずです。そこで人と会うことが、続けるモチベーションにもなります。 誰しも年を取ります。30代半ばごろから、筋肉量は何もしないと年に1%ほど減っていきます。一方で、筋トレの効果は100歳でも認められています。早いにこしたことはありませんが、何歳からだって遅くはありませんよ。 ――人生100年時代、リタイア後も人生はかなり長く続いていきます。 ◆「運動」という言葉は、「運」を「動かす」と書きますよね。自分の意思で運を動かして、少しでも人生を豊かなものにしていきましょう。【千脇康平】 ◇ くの・しんや 1962年生まれ。主な研究分野はヘルスプロモーションや健康政策。筑波大体育専門学群卒業、同博士課程医学研究科修了。健康なまちづくりに取り組む筑波大発のベンチャー「つくばウエルネスリサーチ」を2002年に設立、社長を務める。「60歳からの『筋活』」(三笠書房)など著書多数。<筋肉の「若返り力」を最大限に引き出す筋トレメニューの一例>▽座りながらひざ伸ばし②片方のひざを伸ばし、床と水平になるまでゆっくりと足を上げる。その状態で足首を曲げ伸ばし写真一覧①椅子に浅く腰かけ、背筋を伸ばす。両手は椅子の座面をつかむ②片方のひざを伸ばし、ゆっくりと足を上げる。床と水平になるまで上げたら、足をゆっくり元の位置に戻す。両足で10回ずつ繰り返す(初級:1セット/上級:2~3セット)▽まき割りスクワット①両足を肩幅に開いてまっすぐ立ち、両腕を前に水平に伸ばして手を組む②両腕を伸ばしたままひざを曲げ、息を吐きながらゆっくり腰を落とす③ひざの高さまで落としたら姿勢をキープし、まきをなたで割るように腕をゆっくり上下させる。5~10回「まき割り」して、ゆっくり元の姿勢に戻す(初級:1セット/上級:2~4セット)※いずれも「筋トレスイッチ」(久野譜也著、草思社)から一部を引用