能町みね子さんが憧れた「個性の強い町」 青森と東京の2拠点生活

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エッセイストでイラストレーターの能町みね子さん=東京都千代田区で2025年12月15日、宮本明登撮影写真一覧 雑誌の連載コラムで人気を集め、テレビやラジオのトーク番組でも活躍しているエッセイストでイラストレーターの能町みね子さん(46)は、青森県と東京都で2拠点生活を送っている。両親が東北出身で幼い頃から東北風味の家庭料理で育ち、ずんだ餅や砂糖の入ったカボチャのみそ汁にはなじみがあるという。東北と東京を行き来する能町さんに、東北とのつながりや魅力について語ってもらった。【聞き手・松本信太郎】 ――東北とのつながりは。 ◆両親ともルーツが東北地方にあり、父が福島県喜多方市、母が宮城県南部の出身です。そこから両家とも北海道を経て上京しました。子どもの頃は意識していませんでしたが、実家の料理は東北系ですね。正月はずんだ餅をよく食べたり、祖母が納豆に砂糖を入れたりしていました。カボチャのみそ汁にも砂糖をかなり入れるんですよね。Advertisement ――2021年夏から2拠点生活をされていますが、青森を選んだ理由を教えてください。 ◆青森と血縁的には全くつながりがないんですよ。暑いのが苦手というのが第一で避暑がしたかった。ただ、猫を飼っているので、連れていくなら飛行機での移動は避けたい。そこで新幹線で行ける最北端で、当時知り合いが暮らしていた青森に決めました。現在は毎年6月中旬から9月いっぱいまで青森で暮らしています。エッセイストで文筆家の能町みね子さん=東京都千代田区で2025年12月15日、宮本明登撮影写真一覧 ――青森での生活はどうですか。 ◆もうやめようがないなと思っています。最初はあまり深く考えず、5年ぐらい続けたら区切りをつけようかなどと思っていましたが、今では「やめる」という選択肢はないですね。 ――暮らしてみて、発見や驚きはありましたか。 ◆津軽弁がこれまで以上に好きになりました。東北にはいろいろな方言がありますが、津軽弁が断トツで個性的だと思います。今は各地で方言がどんどん消えてしまっていますが、津軽弁は若い子でもきちんとしたイントネーションを使っていて、東北の中でも残っている方だと思います。ヤンキーっぽい子ほどなまりが強いので、それがまた魅力的ですね。私も青森の人と食事をすると、津軽弁で話すようになりました。能町みね子さん著のエッセー「ショッピン・イン・アオモリ」所収のイラスト写真一覧 ――著書「ショッピン・イン・アオモリ」では、青森での買い物や食事の体験談が登場します。 ◆魚が安いのにびっくりしました。住まいの近くのスーパーで、1匹30円とかで投げ売りしています。私の周りにいる青森の人はおいしいものに対する執着心や探究心が強いです。「あそこで何が売っていた」とか、「旬が終わった」とか。飲み屋さんへ行くと食べ物の話ばかりしちゃいますね。 それから匂いが違うのも感じます。説明しづらいですが、新青森駅で新幹線から降りた瞬間に吸う空気は甘い香りがします。 ――雪が積もる冬の青森はどうですか。 ◆通年で住んでいない分際で言いづらいのですが、やっぱり雪景色は好きです。子どもの頃、北海道で暮らしていた時期があったので、郷愁みたいなものが強くあります。だから、景色としては大好きです。冬は過ごしていないのに申し訳ありません。 ――東北の人の印象を教えてください。 ◆東北の人は謙虚だと思いますね。悪く言うと自虐的というか。地元の人に「青森に住んでいる」と伝えると、まず「なぜ」から始まる。「ここはいいところでしょう」という人はなかなかいない。こちらが青森好きであることが分かると、内心ではとても喜んでいるんだろうとも感じますが、「なぜこんなところに」というのをよく尋ねられます。ほかではあまりない反応ですね。 九州や四国など南の方の県では、純粋に自分の地元が好きだという人が多くて驚きます。こんなにピュアに自分の育った町が好きな人がいるんだなと。「いい町でしょう」とプレゼンしてくる人もいますが、東北は「こんな何もないところによく来たね」といった感じで始まります。「何もないのに」と言いながら、どんどんいろいろなことを紹介してくれるんですよ。最初は腰が低く、自嘲気味。でも私は、それがとても居心地がいいんです。インタビューに答えるエッセイストで文筆家の能町みね子さん=東京都千代田区で2025年12月15日、宮本明登撮影写真一覧 ――地方と都市を行き来する中で感じることはありますか。 ◆青森と東京は、意外に近いと毎回感じます。移動時間は、3時間ちょっと。長いと言えば長いけど、日帰りも何回もしています。いざ2拠点生活するとなると、大変なこともありますが、東京にいる人も、青森にいる人も、何かつらい思いをした時にふっと逃げられる場所として、お互いが存在しているのかもしれないと感じます。 私は東京でせわしなく過ごしてストレスがたまってきた時に青森に来ると解放されるような気持ちになります。逆に、青森にいる人も、それはそれでストレスを感じているはずですから、東京でも別の町でも構わないので、少し抜け出して気分転換できる場所があるといいのではないかと、いつも思います。 ――2拠点生活をする上でアドバイスはありますか。能町みね子さん著のエッセー「ショッピン・イン・アオモリ」所収のイラスト写真一覧 ◆おいしいものを食べたかったら、絶対に青森がおすすめです。全く東北を知らない人なら、異国情緒みたいなものも感じられるはずです。 青森県は他の都道府県に比べて個性が強く、県内各地の個性も強い。そこに私はひかれているのだと思います。育ったのが、あまり個性のないベッドタウンだったので、個性の強い町に憧れがあったんですよね。 1979年、北海道生まれ、茨城県育ち。大相撲に詳しく、本場所中はNHKで解説を務める。著書に「結婚の奴」(文春文庫)、「私みたいな者に飼われて猫は幸せなんだろうか?」(東京ニュース通信社)など。2024年10月には青森県の地元紙・東奥日報に連載中のコラムをまとめた「ショッピン・イン・アオモリ」を刊行した。