ドローンが変える社会は…29歳男性が携わった「日本初」の挑戦

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中島北斗さん=札幌市中央区で2025年6月13日、高山純二撮影 新しい分野だけに、初めての挑戦も多い。 ドローン飛行の許可申請・ドローンスクール設立申請代行をメインにした行政書士事務所を設立した中島北斗さん(29)。 許可申請を担う裏方として、これまでに日本初の挑戦に携わったこともある。 「パッと空を見上げたとき、ドローンが当たり前に飛んでいる世界を見てみたい」 ドローンの活用範囲は着実に広がっており、ドローンが空を飛び交うSFのような未来もそう遠くはないのかもしれない。Advertisement 2024年10月、中島さんは北海道帯広市郊外の山林の中にいた。 今回のミッションは、山奥に設置されている雨量計の設備交換。雨量計は険しい山道の先に設置されており、資機材をドローンで運ぶことになっていた。 操縦者が機体に付いているカメラの映像で安全を確認しながら飛ばせる飛行許可「レベル3・5」でも、当時は物をつり下げて飛ぶことは認められていなかった。 しかし、国土交通省やメーカーと協議した結果、日本で初めてレベル3・5の許可でつり下げ輸送に挑戦できることになった。 つり下げ輸送は計12回に分けて実施。1回のフライトで重さ20~28キロの資機材を運ぶ。雨量計の設置場所までは徒歩で2時間弱の距離。資機材を担いで行けば、さらに時間がかかるかもしれない。 その山道をドローンはわずか5分で飛行する。時間やコスト、労力の省力化は言うまでもない。 「作業していた方が、スコップなどと同じように、ドローンを『当たり前』の存在として扱ってくれていることがうれしかった」 日本初の挑戦はトラブルなく、成功した。 ドローンが現場でどのように扱われ、何を求められているのか。日本初の「レベル3・5」飛行のつり下げ輸送の様子=YouTube動画より(中島北斗さん提供) これを確認するため、中島さんはときおり現場に赴く。事務所のPRも兼ねて、ドローン飛行の様子を動画サイト「YouTube(ユーチューブ)」に投稿している。 昨年5月には、浜頓別町で行われたヒグマの個体調査の現場を訪問した。 これまではドローンを目で確認できるとされる、およそ300メートル四方の範囲しか飛ばせなかった場所だったが、レベル3・5の飛行許可を得て約3キロ四方の範囲を飛ばせるようになった。 見つかったヒグマは4頭。電気柵を乗り越えたり、トウモロコシを食べたりするヒグマの生態を確認できた。 ドローンは車内で操縦でき、調査参加者の安全性も飛躍的に高まった。 現在は滝川市のベンチャー企業が計画する「空飛ぶクルマ」のデモ飛行計画に参画している。年内にまずは人を乗せずに飛行させたいと考えている。 ドローン先進国・中国では、商用運航も間近だと言われているという。 日本では開催中の大阪・関西万博で空飛ぶクルマのデモ飛行が行われている。道内での試験飛行は初めての試みだという。 ドローンや空中の新しい交通手段が普及すれば、いろいろなものの価値が変わると考えている。 空飛ぶクルマが実現すれば、人の移動に変化を生み出し、過疎地やへき地の不動産価値も変わるかもしれない。 建設業で言えば、これまで人間の目で行っていた建物の外壁点検がドローンのカメラで代替され、人手不足の解消につながる可能性もある。 「こうした社会を早く実現するため、自分の力を注いでいきたい」 空の行政手続きを通し、新しい日本の姿を描いていくつもりだ。【高山純二】 1995年生まれ、石狩市出身。札幌北陵高、小樽商科大卒。2016年、中島行政書士事務所を設立。23年にリーガライト行政書士法人を設立した。