美浜原発の新増設へ調査 「あきれて物も言えない」 地元住職の怒り

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原発反対を訴える中嶌哲演さん=福井県小浜市の明通寺で2022年4月9日午後1時59分、岩間理紀撮影 原発の新増設やリプレース(建て替え)は時代錯誤だ――。美浜原発(福井県美浜町)の敷地内での新増設や建て替えを巡り、関西電力は22日、地質調査を再開すると発表した。これに対して、地元などでは怒りの声も上がる。 国宝の三重塔で知られる明通寺(みょうつうじ)(福井県小浜市)の住職、中嶌(なかじま)哲演(てつえん)さん(83)は、関電の姿勢に憤りをあらわにした。Advertisement 「原発にしがみつく強引さ、理不尽さには言葉を失う」 小浜市の出身。「原発設置反対小浜市民の会」の世話人代表を務め、半世紀以上も会の運動を続けてきた。関西電力・美浜原発 市内は、美浜原発で事故が起きた場合、状況によっては避難を迫られる原発30キロ圏内に含まれる。 「古くなった原発を強行的に稼働し続けているだけでなく、さらに新増設などに向けた調査とは、あきれて物も言えない。福島第1原発の事故の教訓を忘れたのか」 関電が調査の再開を発表したのは、参院選の投開票日から2日後というタイミングだった。関電の担当者は報道陣の取材に「一日も早く表明したいという思いがあった。(参院選後を)待った、ということは全くない」と答える。 それでも、中嶌さんは首をかしげる。 「選挙戦では原発の是非は争点にならず、この段階での発表は卑劣極まりない。ひとたび原発事故が起きれば、他の政策論争どころではないのに」 河本猛・美浜町議は「地元は原発に携わる仕事をしているなどしがらみもあって、反対でも声に出して言えない人がほとんど」と明かす。 「原発は核のごみをどうするのか、という問題が解決されておらず、その中で関電が地質調査をするのはとんでもない。核のごみは全国民の問題なので、しっかりと向き合ってほしい」と国民的な議論を求めた。関西電力の美浜原発。左から1号機、2号機、3号機=福井県美浜町で2024年11月、本社ヘリから小関勉撮影 美浜原発の近くに住む60代男性は苦笑しながら、こう話した。 「本音はどこか、よそで新増設などをしてほしいが、福島の原発事故以降、既に建設されている所以外では、できるはずもなくなっている。今日のような日がいつか来るとはみな、分かっていたので、『仕方ない』という気持ちだ」 美浜を含め、関電の3原発(大飯(おおい)、高浜)について、運転の差し止めを求める訴訟が大津地裁で結審し、12月に判決が言い渡される。元裁判官で、弁護団長の井戸謙一弁護士は「美浜原発がある敦賀半島は『活断層の巣』とも言われ、原発が立地する場所として非常に危険だ」と指摘する。 司法判断を待たない関電の発表に「関電には、自然災害のリスクを軽視する考えがベースにあるのではないか」と批判した。 関電の株主の大阪市。横山英幸市長は、関電の原発では使用済み核燃料がたまり続けていることを踏まえ「使用済み核燃料の処分の在り方が示されてから新たな原発を稼働するよう求めている。それなしに次の手に移る行為を是とすることはない」と報道陣の取材に述べた。【芝村侑美、高橋隆輔、藤河匠、高良駿輔】