「25%より下がるなら認めるべき」 新浪氏、関税交渉早期合意訴え

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取材に応じる経済同友会の新浪剛史代表幹事=長野県軽井沢町で2025年7月18日午後6時ごろ、加藤美穂子撮影 経済同友会の新浪剛史代表幹事(サントリーホールディングス会長)は22日までに毎日新聞の取材に応じ、日米関税交渉について「日本は追い込まれている。25%より一定程度引き下げられるなら、認めざるを得ない」と述べた。トランプ米政権による25%の新たな関税の発動が8月1日に迫るなか、早期合意のため譲歩が必要との認識を示した。米政権はトランプ大統領をはじめビジネス界の出身者が多いとして、民間外交の重要性も訴えた。日米の意識にズレ 交渉が始まった4月、トランプ氏は赤沢亮正経済再生担当相とホワイトハウスで会談し「日本との協議が最優先」と告げたとされる。しかし今も合意には至らず、日本が重視する自動車への25%の追加関税引き下げも実現していない。Advertisement これまで一貫して「譲歩と早期合意が必要だ」と主張してきた新浪氏は、「米国が日本を優先的な交渉相手に選んだのも、関税撤廃を認めず、輸入品に少なくとも10%の関税は必要だと世界に示す先行例を作るためだった」とみる。 一方、日本は米国への投資をアピールしつつ自動車への追加関税撤廃などを求める強気の姿勢で交渉に臨んだ。新浪氏は「日米の意識にズレがあり、その間に英国が(自動車への)10%の関税を受け入れて先に合意した」と指摘し、「交渉が長引いた今では、日本に厳しい関税を課してもいいと(米側から)思われているのでは」と警告した。 そのうえで、交渉が長期化するほど状況が悪化するとして、新たな関税や自動車関税で米国側が数%でも引き下げようとするなら「受け入れるべきだ」とした。交渉カードとして、国内基盤に配慮しつつ「備蓄米としてカリフォルニア米の輸入拡大はあってもいい」と話した。民間外交、自身も「協力したい」 また、「外交は政府だけのものではない」と強調。企業が相手国政府と直接交渉する「民間外交」や、官民で情報交換の協力体制を築いていくことが有効との考えを示した。 日本政府はトランプ氏の真意を測りかねて苦しんできた。対照的に、日本製鉄は自ら米政府と交渉し、重要事項に拒否権を行使できる「黄金株」を付与するなどしてトランプ氏を翻意させ、USスチールの買収に成功している。 トランプ氏は元々不動産王で、ベッセント米財務長官はヘッジファンド出身だ。彼らの思惑を探るうえで民間のネットワークや情報は政府にとっても有用だとして、新浪氏自身も「国益にかなうことであれば協力していきたい」という。 石破茂首相に対しては、「トランプ氏が何を求めているか理解し、信頼関係作りに努めてほしい」と注文。電話協議などで関係構築の意思をもっと示していくべきだと求めた。 首相は参院選の街頭演説で、日米関税交渉に関して「なめられてたまるか」などと発言している。新浪氏は米国が世界一の経済大国である点を踏まえて「米国の方が立場上強く、相手の意に沿わなければ(日本は)難しい立場になる」と語った。【加藤美穂子】