有料記事波多野陽 赤田康和 小田健司2025年7月23日 6時00分 東京電力福島第一原発事故から14年。関西電力が22日、福井県美浜町で原発新設に向けた調査を始めると発表した。世界最悪級となった事故の教訓が忘れられていないか、と今も避難を続ける福島の住民は問う。美浜の人たちも複雑な思いを抱える。美浜原発そばの海水浴場=2025年7月22日、福井県美浜町、小田健司撮影 「原子力災害の恐ろしさが忘れられている」 福島県二本松市の田村智則さん(62)は関電による原発の新設方針にため息をもらした。 県内では2011年の福島第一原発の事故で、最大約16万人が避難を余儀なくされた。特に国の避難指示がほぼ全域に出た7町村では事故前の人口が7万2012人だったが、現在の居住者は1万3千人弱にとどまる。 放射線量が高くて住民が居住できない帰還困難区域は、第一原発が立地する大熊町や双葉町など7市町村に残っている。政府は2051年を第一原発の廃炉目標としているが、専門家からは達成が疑問視されている。 田村さんは、事故で全町避難となった浪江町の住民が多数暮らす「石倉団地」の自治会長だ。「14年間も避難が続き、浪江町に戻る人はもう少ない。宅地が除染されても、店や病院がなければ生活できない」 農業を営んでいた田村さんの浪江町の自宅は、いま暮らす石倉団地から約50キロ離れた帰還困難区域内にある。自宅は壊さず残しているが、住めないほどに傷んでしまった。周辺は「大堀相馬焼」の里として知られたが、窯は各地に散り散りになった。農業を再開するには除染されていない山の線量が気になり、将来、避難指示が解除されても戻る気になれないという。帰還困難区域への出入りを制限するバリケード。奥にはかつての住宅が見える=2025年6月17日、福島県双葉町、大久保泰撮影 関電の森望社長は22日の会見で、「原子力の安全性を高める努力をやり続ける」と語った。 だが、田村さんは「地震大国の日本に絶対的な安全はない。事故が起きたら住民の暮らしは元に戻らない」と話す。 一方、町内にある美浜原子力発電所と生きてきた福井県美浜町からは、原発の新規建設を歓迎する声が上がる。 美浜原発を望む美浜町竹波地区。海に面した集落には海水浴場があり、観光客も多い。海の家を営む70代男性は「美浜町は原発のパイオニア。関電が原発を新設するとなれば、ここしかない」と話す。 1970年に運転を始めた美…【はじめるなら今】記事読み放題のスタンダードコース1カ月間無料+さらに5カ月間月額200円!詳しくはこちらこの記事を書いた人赤田康和大阪社会部|災害担当専門・関心分野著作権法などの表現規制法制とコンテンツ流通、表現の自由小田健司ネットワーク報道本部(大阪・堺支局)|地方行政や町ダネ、裁判など専門・関心分野権力監視、原発、公共事業、ボブ・ディランこんな特集も注目ニュースが1分でわかるニュースの要点へ7月23日 (水)関電、原発新設に着手表明石破首相に強まる退陣圧力松本元死刑囚次男が「グル」7月22日 (火)首相、参院選大敗でも続投表明石破政権への協力、慎重な野党サイバー攻撃対策に新ツール7月21日 (月)自公、参院も過半数割れ確実トランプ氏復権半年 世界翻弄夏場の「バッテリー」に注意7月20日 (日)参院選、きょう投開票関電、福井に原発新設検討へ駆除のヒグマ 人襲ったと判明トップニューストップページへ「お前は真っ黒」2度も誤認逮捕 見抜けなかったなりすまし、提訴へ5:00「一度下野すべきだ」強まる退陣圧力 「石破おろし」地方からも続々5:00YouTube巧者だった参政党 「勝ち組」に有利なアルゴリズム19:14コンクールに応募したら著作権は主催者に 規定に批判 政府主催でも6:00ヘビーメタルの帝王、オジー・オズボーンさん死去 「パラノイド」4:05ロシア版マックに「ハローキティ」バーガー登場 ピンクのパンが人気18:00