2025.07.23関 賢太郎(航空軍事評論家)tags: Su-30, ウクライナ軍, スホーイ, ミリタリー, ロシア軍, 航空, 船, 艦艇(軍艦), 軍用機ウクライナの無人艇が、ロシア戦闘機をミサイルで撃墜しました。これは従来の無人艇が対艦攻撃程度しか使えなかったのが、対空兵器としても使えるまでに進化したということ。ただ、その脅威は日本にとっても他人事ではないようです。 2025年5月2日、ウクライナ国防省は黒海上空においてロシア空軍の多用途戦闘機Su-30SMを連続して2機撃墜したという発表を行いました。拡大画像ロシア軍のSu-30戦闘機(画像:ロステック)。 ただ、驚くべきは戦果を挙げたのが、海上を航行するUSV(無人艇)だったという点です。空軍のF-16戦闘機でも「パトリオット」地対空ミサイルでもなく、USVの「マグラV7」が、搭載するAIM-9「サイドワインダー」短射程対空ミサイルで迎撃したとのこと。これはUSVによって戦闘機が撃墜された史上初の例であり、しかも連続的に発生したという点で、重大な出来事であると言えるでしょう。 戦闘機は本来、高度と速度という2つの軸で戦場の空を支配する存在であり、航空優勢(制空権)の確保や爆撃任務の主体となる、なくてはならない兵器です。しかし現代の戦場、とりわけウクライナの空では、すでにこの前提が崩壊しています。 ウクライナとロシアの双方が配備する長射程地対空ミサイル、たとえばロシア製のS-300やS-400、そしてアメリカ製の「パトリオット」はウクライナ上空のほぼ全域をカバーし、正確に撃墜する能力を備えています。したがって、戦闘機はこれら地対空ミサイルシステムの探知圏外でしか活動できなくなっており、超低空飛行を余儀なくされています。 しかし、低空には別の危機が待ち構えます。それは、携帯型地対空ミサイル(MANPADS)や短距離地対空ミサイルなどといった比較的安価かつ小型な対空兵器群です。これらが網を張っているため、戦闘機の活動可能な空間は著しく狭まっており、まさに「逃げ場のない空」がウクライナ上空を覆っている、そんな状況です。 そうしたなか、戦闘機が活動できる数少ない領域であったのが海の上です。しかし、今回の撃墜事件で、海上でさえも戦闘機の低空侵攻能力が部分的に否定されたと言えるでしょう。【次ページ】日本近海でも起きるか?【画像】サイドワインダー積んだ「マグラV7」無人艇&発射の瞬間を見る!