「日本最南端の特急」だけど「日本最南端のJR駅」まで行かない!なぜ? 異色のノンストップ特急 白黒ハッキリせざるを得ない理由

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2025.09.16大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)tags: JR九州, キハ140形, キハ47形, 指宿のたまて箱, 指宿枕崎線, 特急, 観光列車, 鹿児島県来年に登場から15年を迎えるJR九州の観光列車「指宿のたまて箱」は、運行区間が50km未満、かつ途中ノンストップという異色の特急です。先にある“名所”まで延長しない理由をJR九州幹部に尋ねました。あっ!という間に強烈な印象を残す特急JR九州の観光列車「指宿のたまて箱」(通称・いぶたま)は、指宿枕崎線の鹿児島中央―指宿(鹿児島県指宿市)を途中ノンストップで運行する特急です。九州新幹線が全線開業した2011年3月にデビューし、新幹線と乗り継いで有名温泉地の指宿市を訪れる旅行者らを運んできました。拡大画像JR九州の特急「指宿のたまて箱」。車体が屋根から白と黒で塗り分けられている(大塚圭一郎撮影)JR九州が「D&S列車」(「デザイン&ストーリー列車」の略)と呼ぶ観光列車で途中駅に止まらないのは他に、久大本線経由で博多(福岡市)―由布院(大分県由布市)間を結ぶ「或る列車」があります。しかし、「或る列車」は車内で料理を楽しむレストラン列車なのを考えると、通常の観光列車ながらノンストップ運行をしている「指宿のたまて箱」は異色の存在です。しかも運行距離は45.7kmと短く、乗り入れていない指宿枕崎線の指宿―枕崎(枕崎市)間(42.1km)には「JR最南端の駅」の西大山(指宿市)や、「JR最南端の始発駅」の枕崎をはじめとする名所があります。筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)が「指宿のたまて箱」を指宿の先へ乗り入れさせない理由をJR九州幹部に尋ねたところ、明確な理由がありました。あっ!という間に強烈な印象を残す特急「指宿のたまて箱」は童話「浦島太郎」に登場する竜宮伝説を題材としており、指宿が伝説発祥の地といわれていることに着想を得ました。指宿駅前には「竜宮伝説発祥の地 指宿温泉」と記した看板が立てられています。車両のデザインはJR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」などで知られる水戸岡鋭治さんが手がけました。国鉄時代の1979―80年に製造されたディーゼル車両キハ47形2両と、キハ40形を機関換装したキハ140形1両の3両があります。通常は2両編成で走っていますが、夏休みなどの繁忙期には増結した3両編成となります。ユニークなのは、錦江湾(鹿児島湾)側の車体半分を白色、山側の半分を黒色に塗り分けていること。これは「黒髪だった浦島太郎が玉手箱を開けたら白髪になってしまった」という展開を表現しています。【次ページ】「ノンストップ化」で賞味期限が過ぎたジョーク【異色すぎる!?】これが「ミストを噴射するノンストップ特急」です(地図/写真)