毎日新聞 2025/9/10 09:45(最終更新 9/10 09:45) 1967文字ポストみんなのポストを見るシェアブックマーク保存メールリンク印刷ポリオ罹患者の手記を集めた「ポリオの軌跡」。編集した柴田さんも罹患者で、2~4歳ごろに左足につけていた硬い装具を今も保管している=神戸市須磨区で2025年5月15日午後0時27分、稲田佳代撮影(画像の一部を加工しています) 1960年代初めまで国内で猛威を振るった感染症「ポリオ(急性灰白髄炎)」にかかり、手足などにまひが残った当事者207人の手記集を全国ポリオ会連絡会がまとめた。ポリオは2000年に日本を含む西太平洋地域で根絶が宣言され、当事者の高齢化も進む。同会は「障害を持った者が強く生き抜いてきた覚悟と心意気を後世に残したい」と話す。 「この思い出は、なんと悲しい苦しい思い出であることか……」。1歳前後で罹患(りかん)し、全身がまひした男の子を育てた広島県内の母親は治療に奔走した日々をつづっていた。脊髄(せきずい)液にビタミンB1などを注入するための注射を2歳になるまでに100本も打ち、マッサージや電気治療に通い詰めた。Advertisement 男の子は8歳から装具をつけた上で両手で松葉杖(まつばづえ)をついて歩けるようになった。今も後遺症があるが74歳になり、50年代に書かれた母親の手記を今回の手記集に寄せた。 連絡会の2022年の調査によると、当事者の会員の平均年齢は70・1歳。手記集「ポリオの軌跡 ポリオ罹患者はいかに生きたか」への執筆を呼びかけた連絡会共同代表の柴田多恵さん(69)=神戸市=は「いま手記を集めなければ、ポリオを知る人がいなくなってしまう」と力を込める。結婚に反対され A4判488ページの手記集に寄稿したのは1928~88年生まれの当事者。医師や法学者も論考を寄せている。 2歳で罹患した京都府の女性(93)は両下肢が動かなくなり、就学年齢になっても小学校に行かせてもらえなかった。終戦後の物資不足の中、京都市内で3台だけあったというチェーンを回して動かす三輪車を交付され、外出できるようになった。 健常者の男性と結婚しようとして「ありえない話」と周囲に反対された。何年もかけて説得し、実現した。出産や子育てにも奮闘し、89年にはツアー会社から車椅子に難色を示されながら家族で欧州旅行を果たした。手記は「生きるということは、本当にどれだけ大変なのかと思い知らされる毎日ですが、でも、どれだけの喜びをくれたのかとも思う」と締めくくっている。二重の差別受け 性別役割意識や容姿が重視される風潮と相まって、女性が受けた「二重の差別」も記されている。 左足にまひが残った県内の女性(74)は25歳の時に見合いで結婚したが、働かない夫から障害を指摘され、「一生逃げられへんやろう」と言われた。両下肢にまひがある県内の60代の女性は平等な雇用条件を求めて公務員になったが、片手で杖をつきながら1日3度のお茶くみをさせられた。「男性だったらそんな苦労はなかった」と振り返っている。ワクチンの影で ポリオは61年に生ワクチンの大規模接種が始まり、終息に向かった。一方で、生ワクチンではごくまれにポリオを発症することがある。厚生労働省のまとめでは、77~2021年末に国の予防接種健康被害救済制度で185人が認定されている。国立健康危機管理研究機構によると、12年から不活化ワクチンが導入され、14年以降の発症例はない。 手記を寄せた人の中には、誕生翌年の64年に生ワクチンを接種した後に発症した愛知県の60代の男性もいた。当時、国産生ワクチンの安全性が話題になっていたが、政府は無害としていたという。ワクチンポリオと認定されたのは9歳の時。治療や送迎で金銭面や時間、精神的にも限界だった当時の父親を思い、「認定の遅れは被害者家庭にこんな情けない思いをさせる」と訴えた。「ポストポリオ」 柴田さんも1歳で罹患し、左足にまひが残る。95年、同じ境遇の女性と悩みを語り合おうと「ポリオの女性の会」を神戸市で設立。加齢やオーバーワークで残されていた神経細胞が衰え、まひのない手足や呼吸などにも障害を引き起こす「ポストポリオ症候群」を知り、活動をその啓発に移した。近畿や中国・四国地方のポリオ罹患者の会「ポリオネットワーク」で設立30周年の講演をする柴田多恵さん=2025年5月(柴田さん提供) 手記について柴田さんは「一つ一つ読み、涙ぐみながら編集した。多くの人に手に取ってもらい、生の声をしっかりと受け止め、未来の世界に生かしてほしい」と訴える。 冊子は主要な公共図書館などに寄贈しており、連絡会で購入できる。連絡会の郵便振替口座(02720・6・95146)に1000円(1冊分の代金、送料込み)を振り込み、払込取扱票の通信欄に「本・ポリオの軌跡希望」と明記する。問い合わせは柴田さん(078・792・7471)。【稲田佳代】ことば「ポリオ」 ポリオウイルスによる感染症で脊髄(せきずい)性小児まひとも呼ばれる。主に人の便を介してうつるが、大半は発症しない。発症すると発熱し、下肢を中心にまひが起こることもある。国内では1940年代から流行し、60年には5000人以上の患者が発生した。ワクチンの効果により80年を最後に、野生のポリオによるまひ症例の報告はない。あわせて読みたいAdvertisementこの記事の筆者すべて見る現在昨日SNSスポニチのアクセスランキング現在昨日1カ月アクセスランキングトップ' + '' + '' + csvData[i][2] + '' + '' + '' + listDate + '' + '' + '' + '' + '' + '' } rankingUl.innerHTML = htmlList;}const elements = document.getElementsByClassName('siderankinglist02-tab-item');let dataValue = '1_hour';Array.from(elements).forEach(element => { element.addEventListener('click', handleTabItemClick);});fetchDataAndShowRanking();//]]>