“中継ぎ”のはずが長寿命!攻撃ヘリ元祖「コブラ」60年間活躍中 ドローンが出現しても全機退役はまだまだ先?

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2025.09.11斎藤雅道(ライター/編集者)tags: AH-1「コブラ」, ヘリコプター, ミリタリー, 航空, 軍用機, 陸上自衛隊怪獣映画などでも度々登場したことのあるAH-1「コブラ」。同機は実は世界初の攻撃ヘリコプターですが、当初は間に合わせ的に生まれた兵器でした。ヘビ年にちなみ、同機がなぜ長く使われるようになったのかさかのぼります。 陸上自衛隊も運用しているAH-1「コブラ」は、今から約60年前の1965年9月7日、世界初の本格的な攻撃ヘリコプターとしてアメリカで初飛行しました。陸上自衛隊の訓練動画だけでなく、『シン・ゴジラ』などの映画やアニメ・マンガなどにもたびたび登場しており、馴染みの深い機体でもあります。しかしこの機体、実は当初、いわゆる“間に合わせ”の中継ぎ的な存在として誕生したという経緯があります。拡大画像陸上自衛隊が運用しているAH-1S「コブラ」(画像:陸上自衛隊) 試作機は「ベル・モデル209」と呼ばれ、テストパイロットのウィリアム・クインランによって12分間の飛行試験が行われました。この初飛行は、回転翼機の歴史において新たな時代の幕開けを告げる出来事となりました。そして実戦配備も早く、1967年6月にはアメリカ陸軍への納入が始まっています。 アメリカ軍がここまで、地上攻撃に特化した攻撃ヘリコプターを求めた理由――それはベトナム戦争での苦戦にあります。当時、陸軍や海兵隊では、ジャングル地帯でも高い機動力を発揮できる「ヘリボーン作戦」を多用していました。 しかし、地上の状況が分からない中で低速のヘリコプターを飛ばすと、敵の地上部隊からの対空砲火を受けて撃墜されるケースが多くありました。そのため、ヘリボーンの実施前に固定翼の攻撃機を投入し、着陸地点の掃討を試みるようになりますが、敵は神出鬼没で効果的な掃討は困難でした。また、飛行中のヘリコプター編隊を護衛する機体も必要でしたが、固定翼機(飛行機)ではヘリコプターとの速度差が大きすぎて、護衛任務を的確に果たすことができませんでした。 こうした、空からの支援がうまく機能しないというジレンマから、輸送ヘリコプターの編隊と同じ速度で同行・護衛し、着陸時にはほぼ同時に掃討や周辺警戒を担える機体として、当初は汎用ヘリコプターに機関砲やロケット弾を搭載した「武装ヘリコプター」、いわゆる「ガンシップ」が登場します。 この機体では、敵が十分な対空兵器を持っていないと判断される場所で、ホバリングしながらその都度目標を発見し、攻撃を行っていました。しかし、もともと重火器を搭載する前提で設計された機体ではなかったため、速度低下や防弾装備の不十分さなど、さまざまな問題を抱えていたのです。【次ページ】本命機体はAH-56「シャイアン」だった!【画像】ダメそうな見た目…尻に変なプロペラがついた本来は本命機体だったAH-56「シャイアン」