インバウンドで潤ってるんじゃないの? さらに値上げ「貸切バス」縮小市場で各社は何を?

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2025.09.15成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)tags: バス, 旅行, 貸切バス, 高速バス貸切バス運賃がさらに値上げ。一時は「買い叩かれる」存在だった貸切バスは、横並びの運賃制度で保護されました。しかし市場が縮小するなか、老舗が貸切バス事業から撤退するなど、各社が“次”を模索している状況です。貸切バス運賃さらに値上げ 「言い値の業界」は一変 近日中に貸切バス運賃の「基準額」が改定され、修学旅行や旅行会社のツアーなどで貸切バスを利用する際の運賃(チャーター代)が値上げとなる見込みです。拡大画像インバウンド・ツアーのイメージ(成定竜一撮影) 貸切バス事業は、重大事故が続いたため、2014年にいわゆる「新運賃・料金制度」が導入されました。それまでは、旅行会社などから「日車(1日、1台当たり)10万円でよろしくー」というような口頭での発注が常態化していましたが、実際の走行距離と時間に応じた厳格な運賃制度になっています。燃料費や人件費の高騰を受け、その基準額がさらに値上げされます。 一時は「言い値」で走るしかなく、「デフレ経済の象徴」のようだった業界ですが、その様相は一変しました。一方で、歴史を振り返ると、順風満帆とはいかない将来像も見えてきます。戦後から1980年代まで団体旅行全盛期を支えた貸切バス 戦後、日本の観光産業は、遠足などの教育旅行、会社や町内会の慰安旅行といった団体旅行中心に成長し、貸切バスはその主役でした。1950~60年代の「毎年、会社が旅行に連れて行ってくれる」という習慣は、有意義だったことでしょう。国民はまだ貧しく、休みも少なく単調な毎日の中、初めて見る富士山や東京タワーは、人々のモチベーション向上に寄与したはずです。 70年代には個人旅行も増加しました。とはいえ、例えば1973年に結婚した全国のカップルのうち実に35%が、NHK「連続テレビ小説」の舞台となった宮崎県に新婚旅行に行ったと言います。新婚旅行という人生で最もプライベートな場面でさえ、当時は、テレビが有名にした観光地へ、旅行会社のツアーで訪れたのです。前年には、バスガイドを主人公としたテレビドラマ『なんたって18歳!』もヒットしています。 80年代に入ると、欧州製の二階建てバスや、豪華なシャンデリアとサロン座席を備えた車両がブームとなり、カラオケ機器も普及します。バブル経済を背景に、それでも「社員は家族」的な価値観も未だ強く、ゴルフや宴会付きの職域(社員)旅行で好評を得ました。 この頃、貸切バスの新規参入や増車は厳しく規制されていました。そのためバスは慢性的に不足し、修学旅行を主催する教育界やバスを手配する旅行会社の中で、貸切バス業界は「殿様商売」という印象が定着しました。【次ページ】殿様商売がなぜ「買い叩かれる存在」になったのか?【知ってた?】これが「貸切バスの運賃」です!(画像)