映画の推し事毎日新聞 2025/9/15 22:00(最終更新 9/15 22:00) 1801文字ポストみんなのポストを見るシェアブックマーク保存メールリンク印刷「普通の子ども」の呉美保監督=谷口豪撮影 記憶から消えかけていた子ども時代が、こっぱずかしいほど近くなった。子どもたちは共感し、大人たちはスクリーンを通して、あの頃の自分と「対話」する感覚になるだろう。 小学4年生の人間ドラマを描いた映画「ふつうの子ども」。「ぼくが生きてる、ふたつの世界」「きみはいい子」など、国内外で高く評価されてきた呉美保(オミポ)監督がメガホンを取った。「みずみずしく、生き生きとした子どもたちと出会える映画をずっと撮りたかった」と呉監督。無邪気でパワフルで危なっかしい、そんなどこにでもいる子どもたちが繰り広げる「ある夏の出来事」を描く。Advertisement「ふつうの子ども」©2025「ふつうの子ども」製作委員会10歳3人組の環境活動がエスカレート 唯士(嶋田鉄太)は、生き物と駄菓子が大好きな10歳。授業で、環境問題について大人たちを糾弾する作文を読み上げた心愛(ここあ)(瑠璃)に、恋心を抱いている。心愛に近づきたい一心で、唯士は環境問題の勉強を開始。 そこにクラスのやんちゃ者、陽斗(はると)(味元耀大)が加わり、3人はアジビラを作って車に「使うな!」と貼り付けたり、車後部のマフラーにシーツを詰め込めこんだりといった“環境活動”を始める。 大人の目を盗むスリルと達成感で高揚する3人だが、活動は次第にエスカレートし、予期せぬ方向へ転がっていく。「ふつうの子ども」Ⓒ2025「ふつうの子ども」製作委員会大人の思い込み払拭 2児の母でもある呉監督は、自身の子どもと触れ合う中で、映画に登場する子どもたちの姿に違和感を抱くようになった。 「イジメや家庭環境で悩んでいるか、もしくはずっと元気いっぱいか。でも現実の子どもたちは、そんなに単純じゃない。大人の思い込みを払拭(ふっしょく)したかった」。現場では、「エモーショナルに子どもを描かない」を合言葉に撮影に臨んだという。 休み時間に教室で友達とふざけ合う子、図書室で居眠りする子、公園でサッカーやバドミントンをする子、スマホに夢中になる子……。同じ空間にいても全く違う様子の少年少女をカメラは映し出す。「ふつうの子ども」©2025「ふつうの子ども」製作委員会自意識がぶつかり合う瞬間を セリフも順序よく話すのではなく、あえて発言が重なるように編集し、自然な子どもを撮る工夫を施した。「実際の子ども同士の会話は、誰が何を言っているのか分からないぐらい発言が重なり合う。その自意識がぶつかり合う瞬間を多くの作品で描けていないからこそ、大切にしたかった」 半年に及ぶワークショップ形式のオーディションでクラス全員のキャスティングを決め、廃校舎で子どもたちとコミュニケーションを取りながら、個々のキャラクターを作っていった。 「決してうまい子を選んだわけではない。騒がしかったり、空気を読まなかったり、他の現場なら落とされるような子もいた。でも、現実の教室にはそういう子もいるので、出てもらいました。ケンカしながら撮影してましたよ」「ふつうの子ども」Ⓒ2025「ふつうの子ども」製作委員会親も未完成 子育ても迷いながら 主演の嶋田については「気がついたら目で追ってしまう存在。いい意味で執着がなくて、人を笑顔にする面白い空気感を持っている」、演技経験が浅かったという心愛役の瑠璃は「他の子たちに負けまいと背伸びをする姿が胸にきた。彼女の真っすぐさが、心愛に重なった」と評する。 タイトルには「何をもって『ふつう』というんですか?」との問いかけを込めたという。終盤、3人の家族が一堂に会する場面。描かれるのは、子どもを理解しきれていない親たちの姿だ。「親も未完成な存在で、急に立派な大人になれるわけではない。だからこそ、誰一人として否定したくなかった。子育てや人間関係は常に迷いながらだけど、見終わった後に自分をちょっとでも許せる気持ちになってほしいと思って、この映画を撮りました」他人に救われる瞬間描く ラストシーンでは、心愛がある言葉を唯士に投げかける。とびきり笑顔の心愛を、少し戸惑い、不思議そうな表情で見つめる唯士。そこには大人たちが決して入ることのできない、2人だけの時間が流れている。 「意識もしていなかった友達に自分を肯定してもらえたことは、心愛の記憶には一生残るはず。唯士は世界を変えたわけじゃないけど、『好き』という気持ちで一人の人間を守った。家族でもない全くの他人から、図らずも救われる瞬間があるということを最後に描きたかった」 今、この瞬間を生きている全ての子どもたちが特別で希望に満ちた存在である――。鮮やかな幕切れに、呉監督からの励ましと愛が込められている。【谷口豪】【時系列で見る】【前の記事】原発事故被災地の怒りを静かに表出 日本インディーズ界の土壌が生んだ「こんな事があった」関連記事あわせて読みたいAdvertisementこの記事の特集・連載この記事の筆者すべて見る現在昨日SNSスポニチのアクセスランキング現在昨日1カ月アクセスランキングトップ' + '' + '' + csvData[i][2] + '' + '' + '' + listDate + '' + '' + '' + '' + '' + '' } rankingUl.innerHTML = htmlList;}const elements = document.getElementsByClassName('siderankinglist02-tab-item');let dataValue = '1_hour';Array.from(elements).forEach(element => { element.addEventListener('click', handleTabItemClick);});fetchDataAndShowRanking();//]]>