ジャニーズ性被害公表のカウアンさん 新天地デビューと「許す」意味

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カウアン・オカモトさん=本人提供 2023年4月、旧ジャニーズ事務所(現SMILE―UP.=スマイルアップ)の創業者であるジャニー喜多川氏から受けた性被害を先頭切って記者会見で公表したのが元ジャニーズJr.でアーティストのカウアン・オカモトさん(29)だ。 今年1月、ブラジルでメジャーデビューを果たし、新たな一歩を踏み出した。デビュー曲「Vai Dar Bom」(バイ・ダル・ボン)には、これまでの歩みが込められている。Advertisement 1月19日に主要デジタルプラットフォームで配信が始まった「バイ・ダル・ボン」は、ポルトガル語の歌詞に軽やかなJポップの旋律が重なる一曲。アジアポップとブラジル音楽の融合を目指し、ブラジルのビラレージョレコーズとユニバーサルミュージックがタッグを組んで制作された。 ブラジリアン・ポピュラー・ミュージック(MPB)を代表するシンガー・ソングライター、ジャバン・ビアナ氏を父に持つマックス・ビアナ氏や、日本でも活動するプロデューサーのレナート・イワイ氏らが参加した。タイトルは「すべてはうまくいく」 「自作曲は100以上ありますが、今回はあえて自分を前面に出さず、一流の方々に身を任せてみようと思いました。タイトルは『すべてはうまくいく』という意味です」 ポルトガル語を話す日系ブラジル人3世の両親のもとに生まれ、幼少期から日本の音楽だけでなく、ブラジルのバラードやヒップホップにも親しんできた。 前述の通り、23年に沈黙を破ったのも、流れに身を任せた結果で、告発を目的にしたわけではなかったという。 前年に出演したYouTubeチャンネルで被害について問われ、正直に答えたことから一部メディアが動いた。その後、他の被害者も名乗りを上げ、23年9月に旧事務所が性加害を認めるに至った。 「ただ、自分にうそをつきたくなかっただけです。それなのに、まだ腫れ物扱いされることがあります」 被害者というイメージを乗り越えようと、格闘技イベント「Breaking Down」(ブレイキングダウン)にも挑戦してきた。 ブラジルでは「よく言った」「よく頑張った」と声をかけられることが多いという。 「日本と違ってブラジルでは、被害を明かしたこと自体を勇気だと受け止めてくれる空気があります。周りが応援しようとしてくれるのです」たどり着いたある思い 16年に旧事務所を退所後、ブラジルと日本を行き来しながら音楽活動を続ける中で、被害当事者の相談に乗り、企業での講演も重ねてきた。 その経験を通して、ある思いにたどり着いた。 「敵か味方かで分けている限り、心は休まりません。怒りを相手に投げ返さないことを選びました。許すことは負けることではなく、負の連鎖を止めること。恨みを循環させなかったからこそ、冷静な対話が生まれ、結果として事実が認められる流れにつながったのだと思います」 「バイ・ダル・ボン」に込められた<このバイブス(雰囲気)に身を任せ、どこまで行けるか試してみたい>という思いの通り、今月と来月にも新曲を発表する予定だという。 経済的に豊かではない暮らしの中、自分が日本人なのかブラジル人なのか悩んでいた小学4年生の頃、テレビCMから流れてきた小田和正さんの「言葉にできない」に体が震えた。 「あの時、音楽に救われました。だから今度は、自分が音楽で誰かの背中を押せたらうれしい」【菊地香、明珍美紀】