有料記事大内悟史2025年10月9日 14時00分「香淳皇后実録」について語る古川隆久・日本大教授=2025年9月29日午前11時42分、川崎市麻生区、北野隆一撮影 9日付で公表された昭和天皇の妻・香淳(こうじゅん)皇后の「実録」。「昭和天皇実録」や初代宮内庁長官・田島道治の記録「拝謁(はいえつ)記」などの一級史料を読み解いてきた歴史学者・古川隆久さんに、全体の印象や注目すべきポイントを聞いた。――全体的にどのような印象を持ちましたか 「香淳皇后の事績や人柄などの全体像を知る最初の手がかりとしての意味は大きいのですが、やや表面的な記述に終始しています。官公庁の刊行物として一定の制約があるのはやむを得ない面があります」 「一方で、新出資料は数多い。例えば、結婚前の久邇宮(くにのみや)家の記録や宮中の女官日誌、女官長日誌。定期進講者の記録など、多数の新資料の存在が確認できます。これらは公開されることが望ましいと考えます」宮内庁が編纂(へんさん)した香淳皇后実録=2025年10月2日、皇居、代表撮影――実録のどの部分に注目していますか 「香淳皇后に対して定期的に進講していた法学の穂積重遠、日本史の板沢武雄、教育学の倉橋惣三、漢学の加藤虎之亮らがどのような話題を提供していたのか。実録には、詳しい進講の内容や質疑は記されていないものの、進講のタイトルやおおよそのテーマなどが記され、戦前戦中から戦後にわたる長期間の進講の全体像が分かります」 「特に、穂積は繰り返し進講に呼ばれており、1924(大正13)年12月から穂積が亡くなる前年にあたる50(昭和25)年12月まで、四半世紀以上にわたります。専門の法学だけでなく、政治・経済・社会・思想・文学・文化など万般を話題にしています。女性の地位や活動をテーマにした回もあり、ワイドショーのコメンテーターのように時事問題の情報源にしていた節もあります。終戦直前の45(昭和20)年8月10日には、新時代を見据えた宮内省(当時)が穂積を東宮大夫兼東宮侍従長に任命したほどで、天皇・皇后のあつい信頼を得ていました。先進的だが穏健、という穂積の思想が、香淳皇后や女性皇族に支持され、強い影響を与えていたと考えられます」――戦前戦中の女性の地位や活動をテーマにした進講とは、例えば、どのようなものでしょうか 「36(昭和11)年3月2…この記事を書いた人大内悟史文化部|論壇・読書面担当専門・関心分野社会学、政治学、哲学、歴史、文学など連載「香淳皇后実録」を読み解く ~昭和天皇の后、97年の生涯~(全3回)この連載の一覧を見るこんな特集も注目ニュースが1分でわかるニュースの要点へ10月9日 (木)ノーベル化学賞に北川進氏アサヒ障害めぐり犯行声明生成AIの安全基準を整備へ10月8日 (水)自民党、新執行部が発足ノーベル賞 米国の研究者らに万博「運営費」黒字の見込み10月7日 (火)ノーベル賞 阪大の坂口志文氏日経平均 初の4万8100円台田園都市線 列車同士が衝突10月6日 (月)高市新総裁、党人事を調整「ごまさば」アニサキス注意世界遺産・白川郷でクマ出没トップニューストップページへ再審無罪の袴田さん、6億円の賠償請求 捜査や裁判に「違法あった」13:22ふるさと納税で寄付額トップの泉佐野市、交付金減額は違法で「無効」14:03那覇発羽田行きのANA機、モバイルバッテリーから煙 けが人なし13:55【そもそも解説】ガザの戦闘、なぜ長期化? 対立の経緯 今後の展望11:00ニューアベノミクスで利上げ牽制 高市氏と日銀、独立性めぐり緊張感11:00林真理子さんと読む昭和天皇の妻 活発な娘時代や嫁しゅうとめ関係は14:01