2025.10.08武若雅哉(軍事フォトライター)tags: アメリカ軍, ミサイル・砲, ミリタリー, 多連装ロケットシステム, 陸上自衛隊静岡県にある東富士演習場で2025年10月7日、実に58年振りとなるロケット弾の射撃訓練が行われました。射撃したのは大分県に所在する陸上自衛隊第2特科団の多連装ロケットシステム、通称「MLRS」です。 静岡県にある東富士演習場で2025年10月7日、実に58年振りとなるロケット弾の射撃訓練が行われました。拡大画像陸自が保有するMLRSの射撃姿勢(武若雅哉撮影)。 発射されたのは、大分県の湯布院駐屯地に所在する第2特科団の「多連装ロケットシステム」、通称「MLRS」です。MLRSが搭載するロケット弾の数は最大12発ですが、うち半数の6発を発射し、無事に訓練を終えています。 今回用いられたロケット弾は、炸薬などは封入されていない演習弾のため、弾着地に到達しても爆発することはありませんでした。 さかのぼること58年前、1967(昭和42)年8月に東富士演習場で射撃したのは、67式30型ロケット(通称R30)です。これは、戦後初めて実用化された本格的な大型ロケット弾で、当時の陸自装備では最大射程を誇り、着弾時の威力も203mm砲弾より大きかったと言われています。 しかし、この時の射撃は実射試験というイレギュラーなもので、これを最後に東富士演習場ではロケット弾の射撃は行われることはありませんでした。 本日、再びロケット弾が発射されるということで、演習場を横切る形で通っている国道469号線は、安全のため一時的に通行止めの処置がとられています。 無事に終了したMLRSの射撃訓練ですが、報道によると在日米軍からも高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」の射撃リクエストが上がっていると言われています。 なお、これまで日本国内でMLRSの射撃が可能なのは、日本最大の演習場である北海道の矢臼別演習場に限られていました。それでも演習弾を用いて十数kmの射程でしか行えず、より長距離の実射訓練を行う場合は渡米するしかなかったため、コストや労力は決して小さいものではありませんでした。 もし、様々な検討がなされ、2番目に大きな東富士演習場でロケット弾の実射が可能になるなら、部隊の移動に伴う膨大な経費を抑制できるでしょう。ただ、そうした期待の一方、地域住民や自治体との連絡調整はより深化させる必要があります。 さらには、地域の物流の動脈である国道を通行止めにする経済的な損失など、今後さまざまな面からの検証が必要になることは間違いありません。【次ページ】【動画】これがMLRSの射撃シーンです【写真】60年ぶりに行われたロケット弾の実射訓練です