江口寿史さんがモデルとした女性に無断でイラストを作成したとして、その後、撤去、使用が中止されたポスター(江口さんのXから)写真一覧 人気イラストレーターの江口寿史さん(69)が、交流サイト(SNS)上に投稿されていた女性の写真を無断でモデルにして広告のイラストを制作していた問題が波紋を呼んでいる。 SNS上では、江口氏の過去の作品についても、他人の写真を無断利用していたのではないか、との疑惑が浮上。複数の企業が江口氏のイラストを使った広告の公開中止に踏み切るなど、影響が広がっている。Advertisement女性に無断で写真利用? 問題となったのは、10月18~19日にルミネ荻窪(東京都杉並区)で開催予定のイベント「中央線文化祭2025」の告知のため、江口さんが作成したイラストだ。 ヘッドホンを首に掛けた女性の横顔を描いたもので、9月にそのイラストを採用した特大ポスターがルミネ荻窪やJR荻窪駅構内に掲示された。 この作品について江口氏が今月3日、X(ツイッター)上で「インスタグラムに流れてきた横顔を元に描いたもの」「(モデルとなった女性に使用許可を取っていなかったが)公開後に女性からの連絡を受け、その後のやりとりで承諾を得た」などと釈明する内容を投稿した(現在は削除)。 そのポストを引用する形で、文筆業やモデルとして活動する金井球さんがXに「(わたしの横顔が、知らないうちに大きく荻窪に……!?)と、お問合せをしたところ、直接ご連絡をいただき、このようなかたちとなりました」と投稿した。 SNS上では江口氏の制作過程に批判が殺到した。 写真を含む他人の作品を無断でなぞり、自分の作品として発表した場合は著作権侵害にあたる可能性がある。 江口氏の過去の広告作品についても、他人の作品や写真をトレース(なぞる)して盗用するという意味の造語「トレパク」ではないか、という疑惑が浮上。江口氏のイラストと、構図やポーズが酷似したファッション誌の写真などを比較した投稿が大量に拡散される事態に発展している。企業がイラスト公開中止 騒動を受け、江口氏のイラストを起用している企業も対応に追われた。 ルミネ荻窪は3日、事実確認のため、ポスターなどを一時撤去した。 6日にはホームページ上に「必要な確認をおこなった結果、制作過程に問題があったことを重く受け止め、該当ビジュアルを今後一切使用しないことといたします」とおわびを掲載。19日に予定されていた江口氏のトークショーを中止することも発表した。クレディセゾンは7日、江口寿史氏のイラストの使用を控えると発表した=同社HPよりスクリーンショット写真一覧 また、江口氏のイラストを広告に採用しているデニーズ、Zoff、クレディセゾンの3社はイラストの公開停止や事実関係を調査する方針を発表した。 一方、江口氏が観光大使を務め、PRイラストも手がけた出身地の熊本県水俣市は毎日新聞の取材に「イラスト制作の経緯に問題はないと認識しており、使用を継続している」とした。江口氏「弁護士と精査する」 今回の騒動について、毎日新聞が江口氏に取材を申し込んだところ、メールで回答があった。 「現在、各企業からの問い合わせへの対応と、そして『イラストと著作権、肖像権』について弁護士と精査することになっており、現時点でのSNSへの発信および外部、マスコミへの発言は控えるよう言われている」と状況を説明。「自分の言葉での説明はもちろんするつもりですのでお待ちください」とコメントしている。 江口氏は1977年に漫画家としてデビュー。週刊少年ジャンプで「すすめ‼パイレーツ」「ストップ‼ひばりくん!」などのヒット漫画を連載後、80年代からイラストレーターとしても活動。現代的な女性を描く作風で支持を集めてきた。 2024年3月に毎日新聞が掲載したインタビューでは、イラストの制作過程について「資料なしで描けるなんて世界でも何人かしかいないでしょう。(中略)僕は女の子(を描く)なら人形を使って下書きして、恐竜や花を描くなら、図鑑を見る」と答えている。【稲垣衆史】