ノーベル製菓のあめやグミなどの商品=梅田麻衣子撮影写真一覧 2025年のノーベル賞は、10月6日から発表が始まる。各賞の受賞者もそうだけど、毎年この時期に気になるのが「ノーベル製菓」(大阪市生野区)だ。「♪なめたらあかん~」のCMで知られるあめやグミが人気のメーカーと、世界一有名な賞が同じ名前なのはどうして? 本家より一足先に、その由来を「発表」してもらおう。創業者、湯川秀樹氏と親交 創業は1929年。藤澤長治さんが大阪市内に「大長製菓所」を設立し、「星カブト印キャンディドロップ」の生産を始めた。戦時中は配給用のパン、終戦直後は配給用のキャラメルを製造していたこともある。Advertisement 戦後間もない49年、日本人として初めて、湯川秀樹氏がノーベル物理学賞を受賞。湯川氏と親交があった藤澤さんは、受賞に感銘を受けた。「革新的技術などに授与されるノーベル賞のように、キャンディーのノーベル賞を目指そう、と考えたと聞いています」と開発部長の杉本政彦さんは話す。「ノーベル賞飴」(右)と「ノーベルジュース糖」=ノーベル製菓提供写真一覧 早速「ノーベル」の登録商標を取得し、「ノーベル賞飴(あめ)」「ノーベルジュース糖」の販売を始めた。今だったら「便乗」と言われそうですが……。 「時代背景を考えれば、好感を持ってもらえたのではないかと思っています」と杉本さん。終戦から復興の途上だったころ、湯川氏の受賞は人々の希望の光になった。 毎日新聞の記事でも「文化の日の最大の喜び」「わが国に一光彩を放つものであろう」などの談話が寄せられている。そう考えれば、確かに「ノーベル」の名前を付けたあめは、多くの人に喜ばれた気がします。59年には、社名も「ノーベル製菓」に変更した。「スーパーレモン」で全国区に発売当初の「スーパーレモンキャンデー」=ノーベル製菓提供写真一覧 ノーベル製菓が全国的に有名になったきっかけは、85年発売の「スーパーレモンキャンデー」だ。「激辛ブーム」を参考にして刺激的な味を目指し、レモン味のキャンディーに酸っぱいパウダーをまぶした。子どものころ、あまりに酸っぱいのが面白くて、よく友達と食べました。 「キャンディーメーカーは、社名より商品名で覚えられることが多いんです。『スーパーレモンの会社』と認識してもらえるようになり、東京への本格進出につながりました」と杉本さんが教えてくれた。 96年には、1袋にレモン約150個分のビタミンCが入っている「VC-3000のど飴」を発売した。「♪なめたらあかん~」のCMソングは、つい歌ってしまう。そういえば「のど黒飴」(97年発売)、「はちみつきんかんのど飴」(98年発売)など、長年愛される商品は、耳に残るCMソングとセットが多いですね。 「ノーベル賞を取ったら、ずっと『受賞者』と呼ばれますよね。同じように、ずっとある、お客さまが買いたい時に買える商品になるには、マーケティングで商品の魅力や知名度をきちんと広げていくことも大切だと考えています」と杉本さんは言う。商品の魅力と、それを伝える歌やCMの相乗効果が、息の長い人気へとつながっている。見た目と食感 こだわりのグミ グミにも力を入れる。07年発売の「サワーズグミ」やキラキラした星形の「キラふわグミ」、シャリッとしてやわらかな「ソルベットグミ」など、見た目も食感もバラエティー豊か。社内には、グミを作る型にこだわる「グミマニア」もいるのだとか。目と口がある「ペタグーグミ」=梅田麻衣子撮影写真一覧 硬めの食感と薄さが特徴の「ペタグーグミ」は、グレープ味、ソーダ味などをそろえた人気商品。米国の歌手・ビヨンセさんが、交流サイト(SNS)に投稿した画像に写っていたことでも話題になった。 隠された優しさもある。平べったい形で目や口があるが、実は口にあたる穴には、誤ってのみ込んでも息がつまらないように配慮した。デザインの一部としか思っていませんでした。 「老若男女いろんな人に楽しんで食べてもらいたい、ただ穴を開けるだけでは楽しくないと、開発担当者が細部までこだわって形を作りました」と杉本さんは説明する。そして「お客さまには、ただ『かわいい』と思っていただければ、それでうれしいです」とにっこり笑う。 「ノーベル」を名乗るだけあって、商品開発のコンセプトは「世の中にないものを作る」ことだ。「安心・安全はもちろん、新しい味や食感を求めていきたいし、ロングセラーも守っていきたい。社是の『夢とロマン』をお菓子でどうやって実現していくか、これからもずっと考えていきたいです」。天才は1%のひらめきと99%の努力って、本当ですね!【水津聡子】「男梅」に「梅ぼしの種」も!あめやグミ、干し梅などさまざまな種類がある「男梅」シリーズ=梅田麻衣子撮影写真一覧 2007年発売の「男梅キャンデー」は濃厚な梅干し味で、塩味、酸味、うまみ、甘みのバランスが絶妙だ。キャンディーの売り上げが落ちる夏場に食べてもらえる商品を目指した。開発の担当者は、あまり売れずに生産終了した酸っぱい梅干し味のあめが、汗をかく職種の男性たちに大好評だったことに着目した。 男性向けのお菓子や「ちょいワルおやじ」などの言葉がもてはやされたころ。男性をメインターゲットに、塩を利かせた梅干し味にしたことで、消費者の心をつかんだ。今ではグミやシート、梅干し、他社とのコラボなど、幅広く展開する人気シリーズに成長した。 異色なのが「梅ぼしの種飴」。もともとは「硬いあめを作る」研究からスタートした。作ってみたら食感が梅干しの種に似ていたことから、今の名前で商品化した。種をしゃぶっているかのように長い時間楽しめる製法は「企業秘密」(杉本さん)と言う。 ホームページには「今までこれほどの完成度で梅干しの種を再現したお菓子を見たことがない!」と自信満々な社員のレビューも。「そりゃそうやろ」というツッコミはさておき、自由な発想もゆっくり味わいたい。