「勢い」と「スピード」の秋台風 シーズンに備えを

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近畿を襲った室戸台風。大阪では四天王寺の五重塔が倒壊した=1934年9月 日本の南や東の海上にあった熱帯低気圧が発達して、台風18号と19号が発生した。 日本列島はこれから本格的な「秋台風」のシーズンを迎えるが、真夏に風雨をもたらしてきた「夏台風」と「秋台風」ではどっちが厄介なのだろうか? 気象予報会社「ウェザーニューズ」(千葉市)に話を聞いた。迷走と長雨の「夏」 気象庁の統計で1991~2020年の台風の発生数を月平均でみると、6月1・7▽7月3・7▽8月5・7▽9月5・0▽10月3・4――で8~9月が中心だった。Advertisement 夏は本州付近にも太平洋高気圧が張り出すうえに偏西風が高い緯度で吹くため、日本上空では弱い風が吹く状態が続き、台風を移動させる風の流れが一定せずに、のろのろと迷走することが多くなる。 このため、日本付近に滞在する時間が長くなるなどして、大雨や暴風が長期化しやすい傾向がある。突風被害で壊れた建物=静岡県牧之原市で2025年9月5日午後4時16分、本社ヘリから小関勉撮影 そして、土砂災害や洪水、浸水害などの災害リスクが高まる。 11年9月に上陸して紀伊半島に記録的な降雨をもたらし、各地に爪痕を残した台風12号は夏台風の典型だった。 こうした迷走型の夏台風に対して、加速しながら日本にやってくるのが「秋台風」だ。勢力とスピードの「秋」 水は空気と比べて温まりにくいため、気温のピークよりも遅れて水温が上昇する。日本近海の海水温度も、夏より秋の方が高いことが多い。 台風は海水から蒸発する水蒸気をもとに発達するため、海水温度が高いと水蒸気の量が多くなり、台風が発達しやすくなるのだという。1959年の伊勢湾台風で家財道具を運び出す被災者=名古屋市で 秋になると太平洋高気圧が弱まり、それに伴い偏西風が本州付近にも南下する。 このため、発生して北上してきた台風が強い西風に流される形となり、スピードアップして北東に進むことが多くなる。 秋台風の被害として、過去には、「昭和の3大台風」と呼ばれた室戸台風(1934年9月21日に高知県室戸岬に上陸)、枕崎台風(45年9月17日鹿児島県枕崎市付近に上陸)、伊勢湾台風(59年9月26日に和歌山県潮岬に上陸)で、特に被害が甚大だった。 近年では、19年10月に伊豆半島に上陸した台風19号(令和元年東日本台風)などが大きな被害を出した。 もちろんどこで台風が発生するかにもよるが、夏台風に比べると足早に近づくとはいっても、発生から上陸まで1週間程度ということを考えれば、数日程度の「猶予」がある。浸水被害が起きた阿武隈川支流・五福谷川の上流部。伐採跡地から土砂が川に落ちたとみられる形跡があった=宮城県丸森町で2019年10月23日、寺田剛撮影 その間に台風に備えることができる。 台風が来るときは、窓ガラスの飛散防止▽飛ばされやすい物の片付け・固定▽停電・断水対策(非常持ち出し袋の準備、水ため)▽車の給油や高台への移動▽避難経路の確認と家族との情報共有▽ハザードマップの確認――を徹底したい。 お天気アプリ「ウェザーニュース」のように、台風の「発生」「接近」「上陸」時にお知らせするアラームの機能がついたアプリも提供されている。【野口麗子】