朝日新聞記事有料記事増山祐史2025年12月25日 10時00分 羽田空港の滑走路で昨年1月、日本航空(JAL)と海上保安庁の航空機同士が衝突し、海保機の副機長ら5人が死亡した事故で、事故原因を調べる国の運輸安全委員会は25日、2度目の「経過報告書」を公表した。事故機と同型機を使った、中部空港(愛知県)や羽田での再現実験の実施を明らかにしたほか、原因究明や再発防止策の検討のため、分析を進める17項目を新たに示した。 2008年に運輸安全委が発足して以降、中間報告にあたる経過報告書を複数回出すのは初。 中部空港の再現実験は3月26日夜から27日未明にかけて実施。着陸するJAL機に滑走路上の海保機がどのように見えていたかを調べた。事故機と同じ海保のボンバルディア300型が止まる滑走路に、国土交通省の飛行検査機や宇宙航空研究開発機構(JAXA)のヘリが着陸しようと接近し、ゴーアラウンドを繰り返した。中部国際空港での再現実験のイメージ JAL機側から見える海保機の灯火はいずれも白色で、滑走路の中心線灯(白色)などと重なった可能性がある。運輸安全委は実験で、海保機の灯火を赤色に変えたり、滑走路の中心線灯から海保機の位置をずらしたりした場合の見え方も検証した。2001年のニアミス事故と「共通点」も 昨年末の経過報告書では海保、管制官、JALの3者の要因が重なって事故が起きたと指摘し、今後の分析項目が整理された。今回の報告書では、運輸安全委が新たに分析対象に加えた17項目も示された。 羽田の管制塔では、管制官への助言をしたり、航空機の動向を監視したりする担当「飛行監視席」がいたが、監視対象は原則としてA滑走路のみで、事故が起きたC滑走路は含まれていなかった。事故時の滑走路の運用状況では、座席配置も原則としてA滑走路側だった。 また、誤進入を検知して管制官に知らせるシステム「滑走路占有監視支援機能」は正常に作動し、注意喚起を表示していたが、作動時の対応についての規定は定められていなかった。2001年に静岡県の上空でJALの2機が異常接近した事故でも警報装置が作動した際の規定が未整備で、運輸安全委は「(警報の)導入及び運用の状況との共通点が見られる」と指摘。システムの規程や訓練内容など、運用実態についても分析を進めるとした。 海保の羽田航空基地では、離着陸時に不要な会話などでパイロットの集中を妨げることを防ぐ、「ステライル・コックピット・ルール」と呼ばれる国際的な規則を導入していなかった。 海保は事故後、離着陸時などでは運航に必要ない無線を聴取しない▽機内の会話を真に必要なものにとどめる▽航空基地などからの業務通信を真に必要なものにとどめる――などと内規を変更している。 運輸安全委は今後も調査を続け、意見聴取会を開くなどして関係者から話を聞くほか、事故機の製造国であるカナダやフランスなどの関係国に意見照会を行う方針。最終報告書の完成時期について担当調査官は「再発防止策につながるので早く出したいが、断定的な時期は申し上げられない」と述べるにとどめた。羽田でも実験、避難指示の聞こえ方を分析 事故ではJAL機の操縦室床…この記事を書いた人増山祐史東京社会部|国土交通省担当専門・関心分野運輸行政、事件事故、独占禁止法、スポーツJAL機と海保機の衝突事故2024年1月2日、羽田空港の滑走路で日本航空(JAL)と海上保安庁の航空機同士が衝突し、海保機の5人が死亡しました。事故に関する記事をまとめました。[もっと見る]関連ニュースこんな特集も注目ニュースが1分でわかるニュースの要点へ12月25日 (木)ロキソニンなど追加負担へ外国籍の採用 一部見直しへ尾崎将司さん死去 78歳12月24日 (水)今年の出生数、66万8千人程度子どもの所在 つかめぬ自治体政府 メガソーラー規制強化へ12月23日 (火)H3ロケット、打ち上げ失敗性犯歴の確認対象 政府指針案高校の「数学」再編へ12月22日 (月)国籍取得 居住「10年以上」に台湾有事 フィリピンに危機感働きアリに「女王殺し」誘導トップニューストップページへトランプ政権は「中国によるテストに失敗」 米識者の高市氏への提案9:00津波襲来伝えられなかったテレビの後悔 警報時ヘリ映像、各局共有へ7:30入浴中の突然死は12~2月に集中、9割が65歳以上 危険な条件は5:00悲鳴と煙、危機感ゼロで見過ごした異変 海外旅行で事件に遭遇したら10:20クリスマスに選んだ白い犬のおもちゃ 「ごめんね」つぶやいた息子へ6:00入試で半分白紙「もう浪人だ」 トリンドル瑠奈さんが語る上智大合格10:00