毎日新聞 2025/12/25 19:31(最終更新 12/25 19:31) 有料記事 2565文字ポストみんなのポストを見るシェアブックマーク保存メールリンク印刷東京学芸大の岩田康之教授=本人提供 教員採用倍率の低下に歯止めがかからない。 教師教育が専門の東京学芸大・岩田康之教授(教育学)は、教育委員会が求める教師像にありがちな「使命感」や「地元愛」では若者を引きつけられないと指摘する。 「教師になるか迷っている若者へ、これからの教育を担うクリエーティブな教師像を訴えるべきだ」と提言する。【聞き手・西本紗保美】学生「固定層」→「浮動層」へシフト ――今回の調査結果をどう受け止めましたか。 ◆今回の結果は予想通りです。背景にはここ20年ほどで、教員免許を取る人の層が「固定層」から「浮動層」へとシフトしているという構造的な要因があると思います。 東京学芸大のような教員養成系大学には、教員志望の意思が固い若者が多く集まります。しかし、教員養成課程の学生定員は1980年代以降大きく数を減らして2000年代初頭にはピーク時の約半数となり、現在は1万人程度で推移しています。 背景には小泉純一郎政権の構造改革により、かつて需給バランスの観点から政府の「抑制5分野」の一つだった教員養成分野の抑制策が05年に撤廃され、市場競争原理が導入されたことがあります。 その結果、教員養成系以外で新たに小学校の教員養成を始める大学が一気に増えました。現在は200超の大学で小学校の教員免許が取れますが、大半は05年以降に新規参入してきた私立大です。教員免許取得は必須でなく「オプション」とされています。 教員免許を取得する若者の間では、教職はあくまでキャリアの選択肢の一つという「浮動層」が増えています。しかし、採用行政はそのような変化についていけず、固定層向けに「使命感」や「熱意」は強調しても「他と比べて教師はこんなにいい仕事だ」という魅力をアピールできていません。 現場で面接にあたるのは多くが校長などの管理職です。中学、高校だと女性校長は1割にとどまり、まだまだ「昭和のオヤジ」が仕切っている組織です。 浮動層の若者は上意下達な組織でのコミュニケーション力を重視されることにギャップを感じ「ベンチャー企業やNPO法人などの方が新しいことができそうだ」と思われている側面もあるのではないでしょうか。 このように教職の魅力を浮動層に売り込まなかったことが、倍率低下の要因の一つとみています。「幼い先生」扱いに引く若者も ――定年による大量退職、大量採用の波以外に考えられる要因はあるのでしょうか。 ◆若手の早期離職も課題の一つです。 教員養成に新規参入した私立大の中には、学生募集に難儀する中、呼び込み策として教員養成を始めた事例もありました。ただネームバリューがあまりない大学は優秀な学生を集めることが難しく、教員採用試験を受ける人の層が変化しました。 その結果、10年ごろから特に小学校の教師の基礎学力低下が指摘され、現場からは「(精神的に)幼い先生がすごく増えた」との声も聞かれるようになりました。 現場の初任者研修は手取り足取り教える基礎的な内容に変化していますが、そこで固定層の優秀な若者は引いてしまいます。 公立校就職後の「子ども扱い」に不満が募り、これまでの学びを生かせそうな私立校や民間職に転じたり、海外の教育開発支援に出たり、もしくは大学院で学び直したりする若者も目立ってきました。 意識の高い若手が現場から抜けてしまうことは、教師の量・質双方に悪循環です。 特に小学校では採用倍率が2倍を切る自治体も出てきました。 教員採用では基礎学力やコミュニケーション力不足などで明らかに適性を欠くものの、繰り返し受験してくる志望者が一定数います。 そうした層を除くと全員が採用されてしまうような状況になっており、教員の質への影響を憂慮すべき段階に来ています。採用早期化、メリット薄く ――文部科学省は教員の働き方改革や教員採用の前倒しなども後押ししています。 ◆確かに教員処遇改善の効果はあるとは思うものの、東京都が打ち出す「初任給30万円」ほどのインパクトはなく、限定的ではないでしょうか。 例えばタイ・バンコクの大規模な日本人学校では、学校採用教員の初任給が8万5000バーツ、現在の円安のレートで40万円を超えています。 教職調整額の年間1%の引き上げくらいでは、野心あふれる学生を公立校につなぎ留めるにはアピールが弱いのではないでしょうか。 また採用試験の早期化は、確かに教員志望度の高い学生には早くから進路を決められるためメリットは大きいものの、自治体…この記事は有料記事です。残り730文字(全文2565文字)あわせて読みたいAdvertisement現在昨日SNSスポニチのアクセスランキング現在昨日1カ月アクセスランキングトップ' + '' + '' + csvData[i][2] + '' + '' + '' + listDate + '' + '' + '' + '' + '' + '' } rankingUl.innerHTML = htmlList;}const elements = document.getElementsByClassName('siderankinglist02-tab-item');let dataValue = '1_hour';Array.from(elements).forEach(element => { element.addEventListener('click', handleTabItemClick);});fetchDataAndShowRanking();//]]>