映画の推し事毎日新聞 2025/10/20 22:55(最終更新 10/20 22:55) 2341文字ポストみんなのポストを見るシェアブックマーク保存メールリンク印刷 第73回サンセバスチャン国際映画祭(9月19~27日)は、最高賞の「金の貝殻賞」にスペインの「日曜日」を選び、幕を閉じた。サンセバスチャンはスペイン北部のフランスとの国境近く、バスク州にある海と山に囲まれた観光地だ。人口18万人のこの地方都市に、映画祭期間中に17万人が訪れるという。地域に深く根ざしながら、世界に視野を広げ発信する老舗映画祭を取材した。第73回サンセバスチャン国際映画祭で名誉賞を受賞し、記者会見するジェニファー・ローレンス=2025年9月26日、勝田友巳撮影「日曜日」=サンセバスチャン国際映画祭提供バスク作品「日曜日」に「金の貝殻賞」 「日曜日」は、地元バスク州出身のアラウダ・ルイス・デ・アズア監督による家族の物語。17歳の女子高校生が宗教的啓示を受け、強い意志を持って修道院に入るまでを描く。翻意を促す無神論者のおば、娘の決断に戸惑う父親に対し、主人公は神への愛を揺るがさない。Advertisement 日本的な宗教観からはいささか戸惑うものの、主人公の心情描写や映像の重厚さなど、高い完成度。新進のデ・アズア監督はスペイン内外で注目を集めており、今後は日本への紹介も期待できそうだ。「善き谷の物語」=サンセバスチャン国際映画祭提供 審査員特別賞もスペイン映画。ホセ・ルイス・ゲリン監督のドキュメンタリー「善き谷の物語」が受賞した。ゲリン監督は2001年に「工事中」で同じ賞を受賞しており、24年ぶりの帰還は喝采で迎えられた。 カメラが入り込んだのはバルセロナ近郊の小さな区域。古くからの住民と近年の移民政策で移り住んだ人々が共存し、多様な言語と文化が混在する。新旧住民の証言や生活ぶりを並べ、その不満と連帯意識を浮かび上がらせる。ここにはゲリン監督が記者会見で表現した通り、「世界の縮図」があり、こちらは日本でも共感と関心を集めそうだ。 このほかの受賞結果でもスペイン語圏が優勢だったが、描かれた内容は決して地域限定ではない。例えばカミラ・プラアテが最優秀助演俳優賞を得たアルゼンチンの「ベレン」は、実話を基に妊娠中絶の合法化を巡って闘った女たちを描いた。同性からも含む偏見と弾圧に屈せず勝利する物語は、上映終了後、コンペ中一番の大拍手を浴びていた。 中国の「監獄から来たお母さん」は趙小紅が最優秀主演俳優賞を受賞。夫を殺害した罪で服役した女性の再生の物語だが、趙はその当事者。義母や息子も本人が演じ、虚実の境が揺らぐ大胆な作品だった。大映画祭の中の小さな映画祭 サンセバスチャンは、国際映画製作者連盟が公認する長編コンペを持つ14の主要国際映画祭の一つ。このうち欧州には、カンヌ、ベネチア、ベルリンの3大映画祭をはじめ八つがひしめき合う中で、埋もれることなく独自性を保っている。今回もコンペ作品の質はそろい、名誉賞を受賞したジェニファー・ローレンスや、コンペ作品に出演したアンジェリーナ・ジョリーら有名俳優も来場、華やかさも演出した。 ホセ・ルイス・レボルディノス映画祭ディレクターは「カンヌと競争しようとは思っていない。我々は“大映画祭の中の小さな映画祭”」という。特徴の一つは、地元重視だ。国際コンペに世界中の新作を集めるのは当然だが、スペイン映画、ラテン映画に加え、バスク地方で作られた映画の部門も設けている。出資を求める南米の映画製作者に商談の場も用意していた。第73回サンセバスチャン国際映画祭の主会場前でパレスチナの旗を振り「パレスチナに自由を」と訴える人々=2025年9月28日、勝田友巳撮影「パレスチナに自由を」声明 15年ほど前に始まった「料理映画部門」は、美食の地として知られるバスクならではの名物企画。同地方にある料理大学と連携し、食を主題とした映画を上映した後、作品にちなんだディナーが味わえるチケットを限定販売。「即完売の人気」という。 一方で、政治や社会情勢にも積極的に関与する。今回は「ガザ地区で起きているジェノサイド中止を求める」との声明を出し、多くの映画人がステッカーを胸に貼り、記者会見などで積極的に意見表明していた。主会場のレッドカーペット前では連日、観衆がパレスチナの旗を振り「パレスチナに自由を」と訴えた。 レボルディノスは「すべての芸術は世界で起きていることに目を向け、人権について語るべきです。今、ガザで多くの人々が殺されています。映画祭もそのことをはっきりと示すべきなのです」と訴えた。第73回サンセバスチャン国際映画祭で、「炎 劇場版」の公式上映を終え、観客の拍手を浴びながら会場を歩く(右から)平瀬謙太朗監督、出演の中村アンさん、関友太郞監督ら=2025年9月24日、勝田友巳撮影日本映画の感性は独特 日本映画も、存在感を放っていた。今回はコンペに「災 劇場版」を選出。関友太郞、平瀬謙太朗両監督は、前作「宮松と山下」が22年に新人監督部門で上映されている。両監督が「まさかコンペとは」と驚いた抜てきだった。 時間も場所も異なる殺人事件の周囲に、同じ男が姿を見せるスリラー。あえて謎解きはせず、謎めいた人物の不気味さを増幅させる作品で、観客は固唾(かたず)をのんで見入り、上映終了後には大きな拍手を浴びていた。記者会見で両監督は「味わったことのない怖さを表現したかった。直接的な暴力の場面はなく、日常風景が映っているのに怖い。人生に突然訪れる災いとして、怖さを突き詰めた」と話していた。 レボルディノスは「『災』は斬新で、コンペにふさわしい」と話していた。 このほか「てっぺんの向こうにあなたがいる」(阪本順治監督)をコンペ外で、新人監督部門で「白の花実」(坂本悠花里監督)を上映したほか、「旅と日々」(三宅唱監督)、「見はらし世代」(団塚唯我監督)といった新作、「となりのトトロ」「家族ゲーム」などの旧作も選んだ。 アジア映画担当のベルト・クエトは「日本映画は重要な位置を占めている。近年は新たな才能が次々と現れている」と期待する。「世界中の映画が愛や人生、孤独といった似たような題材を描いていても、日本映画は独特だ。素晴らしい感性で、テーマをじっくりと扱っている」と評価した。 3大映画祭や東京国際映画祭と比べてもこぢんまりとしているが、方向性は明確で作品も充実。観客との距離も近く、世界中の映画人に長く愛されているのも当然かもしれない。【勝田友巳】【時系列で見る】【前の記事】ヤンチャなリアムの〝成熟〟に感無量 オアシス来日盛り上げるソロライブ映像関連記事あわせて読みたいAdvertisementこの記事の特集・連載現在昨日SNSスポニチのアクセスランキング現在昨日1カ月アクセスランキングトップ' + '' + '' + csvData[i][2] + '' + '' + '' + listDate + '' + '' + '' + '' + '' + '' } rankingUl.innerHTML = htmlList;}const elements = document.getElementsByClassName('siderankinglist02-tab-item');let dataValue = '1_hour';Array.from(elements).forEach(element => { element.addEventListener('click', handleTabItemClick);});fetchDataAndShowRanking();//]]>