2025.10.05成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)tags: インバウンド, バス, プレミアム・アウトレット, 京都駅, 新大阪駅, 神姫バス, 阪神バス, 高速バス全国で「アウトレットモール行き」高速バスの拡充が相次いでいます。アウトレットそのものへの交通機関のメインとなるだけでなく、結果的に周辺の通勤・通学需要をターゲットにしたような路線も充実するという構図があるのです。アウトレットはもはや「バスターミナル」郊外の大規模アウトレットモールへ向かう高速バス路線の新設が相次いでいます。神戸三田プレミアム・アウトレットに停まる神姫バス(成定竜一撮影)。 国内最大の売上高を誇る御殿場プレミアム・アウトレット(静岡県)へは、2024年に小田急ハイウェイバスが新宿発の高速バスを増便したほか、25年10月からは相鉄バスが海老名、綾瀬発の運行を再開。東京、神奈川各地から御殿場アウトレットへの直行高速バスは、合計で最大25往復に上り、続行便(2号車以降)も見られます。また、今年6月に増床された三井アウトレットパーク木更津(千葉県)へも、東京駅、新宿からの便が増便されており、増床に合わせ成田空港線も運行を再開しました。FIT(海外からの個人観光客)が帰国前に買い物に立ち寄ることを狙ったものでしょう。 2025年10月14日に兵庫県の神姫バスが開設する新路線「三田(兵庫県)~京都線」もまた、2往復のうち1往復は京都駅とアウトレットを直行するものです。三田はすでに、神戸三宮や大阪と同社を中心とした高頻度の高速バスで結ばれており、さらに“京都進出”を果たす形となりますが、この路線からアウトレットと高速バスの関係性を紐解いてみます。通勤客とアウトレット客で需要を相互補完 三田市からは、神戸の三宮へ約90往復、大阪へは約50往復(いずれもウッディタウン、フラワータウンなどニュータウン地区、三田駅地区の合計。平日ダイヤ)も頻発しています。新たな京都線は、新名神高速道路経由でフラワータウンから京都駅まで75分と、大阪経由となる鉄道と比べ意外と近い印象です。 もともとウッディタウン、フラワータウンから神戸、大阪へは鉄道だと乗り換えが必要で、高速バスは通勤に人気です。しかし、通勤高速バスはどこもそうですが、朝の上り、夕方の下りに乗客が集中し、昼間の需要があまりありません。所要時間が1時間半ほどなら乗務員は1日に2往復できますが、中間の1往復が「空気輸送」になりがちなのです。 しかしフラワータウンの近くには神戸三田プレミアム・アウトレットが、またウッディタウンに隣接して関西学院大学の神戸三田キャンパスがあり、その需要が「真ん中の1往復」を穴埋めしてくれます。通勤客を乗せて8時台に都心へ着いた車両に、今度は買い物客や学生が乗り込み続々と折り返します。特に大学の「2限」開始時刻に合わせ、三宮発9時50分は4台体制と壮観です。 ただ今回の京都線では、需要やダイヤ設定を考慮して「真ん中の1往復」は神戸三田プレミアム・アウトレットに焦点を絞っています。【次ページ】アウトレットのアクセス強化3点セット戦略【スゴ…!】開設7年で本数“54倍”になった高速バス ビフォーアフター(画像)