国連社会開発研究所のマグダレナ・セプルベダ所長=提供写真 国連社会開発研究所のマグダレナ・セプルベダ所長が3月8日の国際女性デーに合わせて毎日新聞に寄稿し、企業の納税とジェンダー格差の関係について述べた。 ◇ 世界では男女格差がしばしば問題視される。しかし、その格差を維持する仕組み――すなわち、最も裕福な人々に合わせて作られた世界的な税制――について語られることはほとんどない。多国籍企業や超富裕層が責任を問われないように設計された税制は、彼らが本来負担すべきコストを女性に背負わせる仕組みでもある。Advertisement 2026年の国際女性デーは、現在進行している実態――権利の後退やそれに対する抵抗――を公に表明する機会である。 多国間主義の解体、その機関へ資金拠出の停止、そして開発支援プログラムのかつてない廃止が不確実性を招き、抑制がないまま、不平等を深刻化させている。 不平等を語ることは、すなわちジェンダーの不正義を語ることでもある。とりわけグローバルサウスにおいて、不公正な税制や緊縮政策の重い負担が不釣り合いな形で女性たちにのしかかっている。例えば、保育所や公共サービスが削減されると、その負担を引き受けるのは主に女性である。国家が負担しなくなったコストを吸収する形となり、ケアをめぐる不公正な社会構造がいっそう強化されてしまう。 最近の報告は、看過できない現実を示している。数十年にわたる国際的な要求や約束にもかかわらず、男女間の賃金格差は世界のすべての地域で依然として根強く残っている。女性が労働時間当たりに受け取る賃金は依然として男性の61%に過ぎず、この数字自体が経済構造の深刻な不平等を物語っている。しかし、無償労働を考慮に入れると、状況はさらに深刻になる。社会を支えているこの「目に見えない労働」は、その大半を女性が担っているからだ。この場合、女性の実質所得は男性のわずか32%にまで落ち込む。これらのデータは、単なる不平等を示しているだけではない。真の変革を求める構造的な不正義をも浮き彫りにしている。 確かに祝うべき進展はあった。しかし、自己満足に陥っている余裕はない。世界銀行の「グローバル・フィンデックス」は重要な進歩を示している。現在、低・中所得国では、女性の73%が金融口座を持っている。その36%は正式な金融機関で貯蓄を行い、58%はデジタル決済を利用している。確かに変化の兆しは見える。だが、それだけでは不十分だ。依然として7億人の女性が金融システムから完全に排除され、経済的な回復力を築き、真の自立を実現するための基本的な手段を奪われたままでいる。 そして、つい先月、世界銀行自身のもう一つの報告「Women, Business and the Law」が改めて明らかにしている。女性の法的・経済的排除は単なる技術的な問題ではなく、発展を意図的に妨げる政治的な決定である。この報告書は、ほとんどの国で、経済的平等を保障するはずの法律が十分に実施されていないことを示している。そのため、女性は雇用や金融、起業、そして実質的な前進の機会へのアクセスが制限されている。こうした実施の欠如は、女性の経済参加を阻むだけでなく、社会全体の生産性と成長の足かせになっている。 だからこそ、遠回しに言う必要はない。これは行政の問題ではなく、権力の問題である。問題は、誰が資源や権利、機会にアクセスできるのか、そして誰が、守られない法律と女性の排除から利益を得る経済構造のもとで体系的に取り残されるのかという点にある。何百万人もの女性が金融システムの外に置かれ、彼女たちを守るはずの法律の実効的な保護を受けられないままでいる限り、ジェンダー正義も、包摂的な発展も、強い経済も実現しない。 この不完全な法的構造は、デジタル経済における税収の意図的な損失という、同様に破壊的な別の原動力と結びついている。デジタル・プラットフォームはグローバルサウスの市場で活動し、ストリーミングやオンライン広告、電子商取引を通じて巨額の利益を上げている。しかし実質的な拠点をほとんど持たないまま、価値を生み出す国では課税されない。法の抜け穴を利用して、利益を低税率または無税の地域へ移しているのである。 結果は明らかである。各国は重要な税収を失う一方、多国籍企業は巧妙な仕組みを使って納税義務を回避している。その結果、国家は保健、教育、ケア、社会保障を支えるための財源を失っている。こうした問題を指摘しているのが「税正義ネットワーク」である。同団体の推計によれば、多国籍企業や超富裕層による世界的な税回避によって、世界は毎年4920億ドル(約77兆2000億円)分の税収を失っている。この損失は特に中・低所得国に大きな影響を及ぼしている。さらに言えば、多国籍企業が税金を払わないとき、そのコストを誰かが負担することになる。ほとんどの場合、それは女性だ。公的保育も、補助金も、自由な時間も失う女性である。 私たちは、不平等の拡大や富の集中、社会保障制度の弱体化、民主主義の後退、人権の侵害といった複数の危機に直面している。しかし、抵抗と社会的な動員はすでに各地で広がり始めている。ルールに基づく国際秩序の後退は、その速度と規模の大きさゆえに、逆説的にも触媒として作用している。圧力が強まるほど、社会の応答はいっそう強くなる。 そうした応答が最も明確に表れている分野の一つが、税の正義である。各国政府や国際機関、市民社会組織の間では、税の正義――そしてジェンダー正義――なくして世界経済の安定は成り立たないという認識が共有されている。 最も強い経済力を持つ者たちに公正な課税を求める声が、ますます高まっている。一部の超富裕層は主要メディアに影響力を持ち、自分たちへの課税は有害だと主張している。しかし、公開されている証拠はその逆を示している。あの「ウォール・ストリート・ジャーナル」でさえ、億万長者の低い税負担が経済にとって問題であると認めている。 さらに、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの最近の研究は、超富裕層の低い実効税率が不公正であるだけでなく、中間層への課税に対する市民の支持を弱めていることを示している。 今日では、財政政策は不平等を強めることもあれば、それを是正することにもなり得るという認識が広く共有されている。私も参加している国際法人課税改革独立委員会(ICRICT)の最近の報告は、国際税制の仕組みが強い国や巨大企業に有利に偏っており、とりわけ女性や少女に影響を及ぼす構造的な不平等を固定化していると指摘している。したがって、それを改革することはジェンダー正義の実現でもある。 そのため、国連の税制条約をめぐる交渉は、こうした根本的な課題を議論するうえで、現在最も重要な多国間の場となっている。特権を失うことを恐れる人々から圧力や抵抗が向けられているのも、驚くべきことではない。専門家によれば、この条約(27年末までに国連総会で採択される予定)は、ジェンダー不均衡を是正し、世界的な税の公平性を強化するための規定を盛り込む必要がある。 税の正義の実現に取り組む社会団体や学術機関の広範なネットワークは、交渉を前進させるための具体的な提案を提示している。これらが適切な方向に進めば、国連税制条約の発効は歴史的な節目となるだろう。 しかし、真の税正義を実現するためには、この条約だけでは足りない。多国籍企業に対する少なくとも25%の世界最低税率、資産の2%を課す超富裕層への協調課税(ICRICTの同僚でもあるフランスの経済学者ガブリエル・ズックマンの提案)、そして最終受益者を特定し脱税や違法資金の流れを抑えるための世界資産登録制度(GAR)といった措置が必要である。 国連だけでなく、税の乱用に対する抵抗とジェンダー平等を推進する動きは、他の国際フォーラムでも広がっている。女性の経済的エンパワーメントは、アディスアベバで開催された直近のアフリカ連合首脳会議の最終声明にも盛り込まれた。 米国でも、国連の税制交渉から離脱し、多くの多国間機関への資金拠出を削減しているにもかかわらず、変化の兆しが見られる。カリフォルニアでは、資産10億ドル(1570億円)以上の住民に5%の特別税を課す住民投票を求める議論が進んでおり、超富裕層により大きな負担を求めるべきだという社会的合意が日ごとに広がっていることを示している。 また、25年にチリのサンティアゴ市で開催されたハイレベル会議「民主主義を守るために」や、待望の不平等に関する政府間専門家パネルの設立構想は、こうした抵抗の枠組みをさらに強固なものにしている。 多国籍企業や超富裕層に適切に課税し、国際的な租税回避や違法な資金の流れを抑えることは、ケア制度や社会保障、公共サービスを支え、男女の実質的な平等を実現するために不可欠である。財源がなければ、女性の権利は空虚な約束にすぎない。税の公正さを求めることは単なる技術的な問題ではない。それは、女性が尊厳ある自由で充実した生活を生きる権利を求めることである。オランダ・ユトレヒト大で国際法の博士号、英エセックス大で法学修士号を取得。貧困・開発・人権の専門家として、2008~14年に極度の貧困と人権に関する国連特別報告者を務めたほか、米州人権裁判所、中米コスタリカの国連平和大学、スイス・ジュネーブの国際人権政策評議会で上級職を歴任。現在、国連社会開発研究所の所長、および国際法人課税改革独立委員会の委員。